「ミナト!もう良い!早く行こう!」
立ち尽くしていたミナトの腕を、ぐっと引っ張る。
しかし彼は素直に着いて来てはくれなかった。
「先に行ってくれ、琥珀!俺は兄上をっ……」
「っ駄目だよ、ミナトまで死んじゃ――――」
必死にミナトの腕を引っ張った時、それは聞こえた。
初めは、ゴゴゴゴ……と言う、低い地響きだった。
「何……?」
地響きに伴い、パラパラと天井から足の欠片が落ちてくる。
地の底から響くような振動が足元から伝わってきて、誰もが一体何の音なのだと耳を澄ませた。
そして次に聞こえてきたのは、ドドドド……と何かが固いものにぶつかる音。
それはまるで、滝壺から落下してくる大量の『水音』のようにも聞こえた。
「まさかっ……!」
カヤが音の正体に気が付いた時、ズズー……ン――――と言う大きな音と共に、砦全体がグラグラと激しく揺れた。
「きゃあ!」
立っていられないほどの揺れに、カヤは思わず地面に座り込む。
「琥珀……くそっ、」
ミナトがカヤに近づいてこようとしたが、あまりの揺れの大きさに彼も地面に膝を付いてしまった。
カヤ達だけでは無い。
祭壇の上に集まっていた人達が、同じように成す術も無く次々と地面に座り込んで行くのが見えた。
「っ川が氾濫したのかもしれねえ!砦に水が流れ込んでんだ……!」
濛々と土煙が立ち込める中、誰かが叫んだ。
「カヤッ!」
翠がこちらに向かって来ようとするのが見えた。
しかし、彼もまた激しさを増す揺れのせいでまともに歩けないようだった。
四方八方から、ガラガラガラッ……と大きな岩が崩れ落ち、地面に打ち付けられて砕け散る。
その破片がカヤの真横スレスレを掠めた時、死ぬかもしれない、と本気でそう思った。
蒼月を必死に抱き込みながら上を見上げれば、聖堂の天井の岩がバリバリと音を立てて剥がれ落ちて行く所だった。
あれだけ壮大だった洞窟が、こんなにも呆気なく崩れ落ちて行く。
その非現実的さに言葉を失った時、カヤの眼に映ったのは、一際大きな岩塊が降って来る光景だった。
その真下には―――――ミナトの姿が。
カヤの心臓がひっくり返った。
「ミナト!危なっ……」
「――――ミズノエッ……!」
カヤの叫びを掻き消した声。
それは、聴いた事もないほどに必死に彼の声だった。
風のように飛び出してきたハヤセミが、ミナトの身体を渾身とも言える力で突き飛ばした。
そのままハヤセミが地面に倒れ込むのが見えた。
(―――――どうして)
次の瞬間、カヤの目の前に大量の岩が雪崩のように降り注いできた。
「きゃぁああぁぁ!」
凄まじい衝撃が地面を伝ってカヤを襲ったかと思うと、足元がバキバキッ!と音を立てた。
前が見えないほどの砂埃の中、カヤが見たのは地面を走る雷のような亀裂だった。
地面が割れたのだ――――そう認識した瞬間、足元が崩れ落ちた。
ふわり、と胃袋が浮かび上がり、体が空中に投げ出される。
無我夢中で蒼月の身体を抱き締めた時、
「カヤッ――――――――!」
未だ雨のように降り続ける岩の隙間から、翠がこちらに向かって手を伸ばしているのが見えた。
―――――翠。
叫ぼうとした声は、崩壊の音に呑みこまれ、そしてもう彼に届くことは無かった。
立ち尽くしていたミナトの腕を、ぐっと引っ張る。
しかし彼は素直に着いて来てはくれなかった。
「先に行ってくれ、琥珀!俺は兄上をっ……」
「っ駄目だよ、ミナトまで死んじゃ――――」
必死にミナトの腕を引っ張った時、それは聞こえた。
初めは、ゴゴゴゴ……と言う、低い地響きだった。
「何……?」
地響きに伴い、パラパラと天井から足の欠片が落ちてくる。
地の底から響くような振動が足元から伝わってきて、誰もが一体何の音なのだと耳を澄ませた。
そして次に聞こえてきたのは、ドドドド……と何かが固いものにぶつかる音。
それはまるで、滝壺から落下してくる大量の『水音』のようにも聞こえた。
「まさかっ……!」
カヤが音の正体に気が付いた時、ズズー……ン――――と言う大きな音と共に、砦全体がグラグラと激しく揺れた。
「きゃあ!」
立っていられないほどの揺れに、カヤは思わず地面に座り込む。
「琥珀……くそっ、」
ミナトがカヤに近づいてこようとしたが、あまりの揺れの大きさに彼も地面に膝を付いてしまった。
カヤ達だけでは無い。
祭壇の上に集まっていた人達が、同じように成す術も無く次々と地面に座り込んで行くのが見えた。
「っ川が氾濫したのかもしれねえ!砦に水が流れ込んでんだ……!」
濛々と土煙が立ち込める中、誰かが叫んだ。
「カヤッ!」
翠がこちらに向かって来ようとするのが見えた。
しかし、彼もまた激しさを増す揺れのせいでまともに歩けないようだった。
四方八方から、ガラガラガラッ……と大きな岩が崩れ落ち、地面に打ち付けられて砕け散る。
その破片がカヤの真横スレスレを掠めた時、死ぬかもしれない、と本気でそう思った。
蒼月を必死に抱き込みながら上を見上げれば、聖堂の天井の岩がバリバリと音を立てて剥がれ落ちて行く所だった。
あれだけ壮大だった洞窟が、こんなにも呆気なく崩れ落ちて行く。
その非現実的さに言葉を失った時、カヤの眼に映ったのは、一際大きな岩塊が降って来る光景だった。
その真下には―――――ミナトの姿が。
カヤの心臓がひっくり返った。
「ミナト!危なっ……」
「――――ミズノエッ……!」
カヤの叫びを掻き消した声。
それは、聴いた事もないほどに必死に彼の声だった。
風のように飛び出してきたハヤセミが、ミナトの身体を渾身とも言える力で突き飛ばした。
そのままハヤセミが地面に倒れ込むのが見えた。
(―――――どうして)
次の瞬間、カヤの目の前に大量の岩が雪崩のように降り注いできた。
「きゃぁああぁぁ!」
凄まじい衝撃が地面を伝ってカヤを襲ったかと思うと、足元がバキバキッ!と音を立てた。
前が見えないほどの砂埃の中、カヤが見たのは地面を走る雷のような亀裂だった。
地面が割れたのだ――――そう認識した瞬間、足元が崩れ落ちた。
ふわり、と胃袋が浮かび上がり、体が空中に投げ出される。
無我夢中で蒼月の身体を抱き締めた時、
「カヤッ――――――――!」
未だ雨のように降り続ける岩の隙間から、翠がこちらに向かって手を伸ばしているのが見えた。
―――――翠。
叫ぼうとした声は、崩壊の音に呑みこまれ、そしてもう彼に届くことは無かった。