【完】絶えうるなら、琥珀の隙間

バタンッ――――と、その重たい扉が開いたと同時、バタバタバタと走り去っていく足音。

それに釣られるようにして、扉の近くに居た人達も戸惑いながら外に出て行く。


あとはもう、翠が何かを言う必要は無かった。

参列者達、そして解放された兵達は、押し合い圧し合いしながら聖堂の扉に向かうと、我先に走り去っていく。


やがて聖堂の中には、誰一人として参列者は居なくなり、ガランとした空間が残されるのみとなった。


「……どうにかなったな」

隣で翠が、ふう、と息を吐いた。

空っぽの聖堂を呆けながら見つめていたカヤは、ゆるゆると翠を見やる。


確かにそこに翠は居た。

しっかりと立っているし、こんなにはっきりと笑っているし、何よりその指が、心底愛おしそうにカヤの頭を撫でてくれる。

ぽん、ぽん、といつものように二度撫でられた時、カヤの涙腺が呆気なく崩れ落ちた。

「っすいぃぃ……」

ぐしゃ、と顔を歪めて、翠に抱き縋る。

翠はカヤを迎えるようにして抱き締めてくれた。

翠の指がカヤの身体を、ぐっと引き寄せる。

痛いくらいのその力が、信じられない程に嬉しくて、カヤは頭の芯が歓喜に滲むのを感じた。

嗚呼、翠の香りだ。夢じゃないんだ。本当に翠なんだ。


「ぶ、無事だったんだね……生きてたんだね……!」

しゃくりあげながら、どうにか言えば、翠はカヤの後頭部を撫でながら「うん」と頷く。

「遅くなってごめんな。あいつが動けるようになるまで少し時間が掛かってな」

「あ、あいつ……?」

首を傾げたカヤを、翠が静かに放す。

「あいつだよ」

翠が指し示す方向に顔を向けたカヤは、心臓が嬉しさでひっくり返った。

「律!」

律は深く布を被った状態のまま、聖堂の隅から現れた。

駆け寄ったカヤは、込み上げる嬉しさに任せて、律に抱き着いた。

「律っ……律……!良かった……!無事でよかった……!」

近くに見ると律の顔は青白かったが、それでも彼女はカヤに笑みを見せる。

「良く頑張ったな、カヤ。不安な思いをさせてすまなかった」

ぶんぶんと首を横に振る。

もうそれ以上言葉が出てこなかった。

泣きながら律にしがみ付いていると、翠が静かに近寄ってきた。

「カヤ。こいつまだ傷治ってないから、あんまり力入れないようにな」

翠に苦笑いしながら言われ、カヤは慌てて律から離れた。

そうだった。律は背中に酷い傷を負っていたのだった。