【完】絶えうるなら、琥珀の隙間

「何?」

期待を込めて聞けば、律は薄っすらと微笑みを浮かべていた。

「翠に言伝した後、情報を集めながら帰ってきたんだが、どうやらこの近くに虎松が産まれた村があるらしいんだ。もしかしたら、皆その村に身を寄せているのかもしれない。今から向かってみるが、カヤも行くか?」

「本当に!?行く!一緒に行かせて!」

首がもげてしまうほどの勢いで肯定すると、それまで黙っていた弥依彦が胡散臭そうに口を開いた。

「本当にその村に居るのか?居なかったら無駄に危険な眼に合うだけだぞ」

「良いの。此処でやきもきしてるより、そっちの方がずっと良い」

きっぱりと答えれば、律も同調するように頷いた。

「そういう事だ。よし、デブ。お前も来い」

「はあ!?なんで僕なんだよ!?」

「森には、兵がうじゃうじゃ居る。戦える者は多い方が良いだろうが」

仰天する弥依彦に、律は面倒くさそうに答えた。

「だったらミズノエも行けば良いじゃないか!」

「全員が出て行くのは賢くない。ミナトには念のため此処に残ってもらう」

「そうは言っても僕の腕なんてたかが知れてるぞ……お前一人で十分じゃないのかよ?」

どうしても此処に残りたいらしい弥依彦に、律は盛大な溜息を付いた。

「煩い男だな。居ないよりは居る方がマシだ。それに……」

不自然に言葉を切った律は、無意識のように右肩を撫でた。

「それに?」

弥依彦が訝し気に眉を寄せると、律はすぐに腕を降ろした。

「何でも無い。行くぞ。さっさと立て」

有無を言わせない口調に、弥依彦は諦めたように腰を上げた。

こうして、カヤ、律、弥依彦はミナトに留守を頼み、洞窟を出たのであった。









「ここ……?」

三人が虎松が産まれたと言う村に着いた頃には、既に陽は傾き初め、辺りが橙色に染まっていた。

幸いにも一度も砦の兵達に会う事も無く到着した村は、田畑の広がる、小さくのどかな村だった。


「話しではこの村のはずだ。手分けして捜してみよう」

「分かった!私はこっちを捜してくる!」

律の言葉にすぐさま頷いたカヤは、はやる気持ちを任せて走り出した。

「あまり遠くへ行くなよ!」

「うん!」

叫んだ律に大きく手を振り、勢いよく地を蹴る。

今日の畑仕事は終わったのか、辺りには村人達の姿は無い。

人っ子一人居ないあぜ道を駆け抜けていたカヤは、丁度収穫時らしい芋畑の間の道に入った。


「蒼月ー!ナツナー!ユタ―!」

大声で叫びながら、必死にぐるぐると視線を巡らせる。

しかしながら、カアカアと山へ帰っていく烏の鳴き声が聞こえるだけで、呼びかけに反応する声は無い。