【完】絶えうるなら、琥珀の隙間

一番初めに仲間になってくれた蔵光は、なんと十数年前に琥珀の原石を『出世払い』で譲ったミナトの事を覚えていてくれて、彼の呼びかけのお陰で、ここまでの大所帯になったのだ、とミナトは言った。



「どういう事をしてるの?」

蔵光やミナトの人望に驚きつつ、カヤは尋ねた。

「主には情報収集だな。あいつ等には砦に潜り込んで兄上の動向を探ってもらってた。そうしたら、どうも最近砦の兵の動きが慌ただしくなってきた、って報告を受けてな。もしかすると、近々戦が起きるかもしれねえ」

「集落を襲ったのも砦の兵だったし、何か関係があるのかな……」

カヤもミナトも、自然と暗い表情になった。

一体何が起きているのか分からないが、良くない事が起きているのは確かだ。

このまま事が進めば、ミナトの読み通り、戦が起きてしまうかもしれない。


「どうだろうな、まだ何とも言えねえ。ただ……」

ミナトが変に言葉を途切れさせたので、カヤは怖くなってしまった。

「ただ……?」

恐る恐る先を促せば、彼は重たい口を開いた。

「お前と蒼月は、兄上に狙われてるのかもしれねえな」

あまりそうは思いたくもないが、カヤも同意見だった。


ただの偶然で、たまたまあの集落が襲われたとは考えにくい。

何かしらの目的を持たなければ、わざわざあそこまで徹底的に集落を焼き払い、カヤ達の捜索など行わないだろう。


(ハヤセミ……)

あの薄ら寒い笑顔が脳裏に浮かび、腹の中に石でも詰め込んだような不快感に襲われた。



「戻ったぞ」

そんな声が聞こえ、沈黙していたカヤは勢いよく振り返った。

少し息を乱した律が足早に洞窟に入って来る所だった。

「律!おかえり!」

「翠に伝えてきたぞ。あちらは引き続き、蒼月を捜索するようだ」

つらつらとした報告の後、カヤは窺うように尋ねた。

「他には……何か言ってた?」

「いや、特には」

首に振った律に、カヤは「そっか」と短く頷いた。

浮かない返事のカヤに律が不思議そうな顔をしたが、それを気取られぬように俯く。


翠は、カヤの事を見限ってしまったかもしれないが、少なくとも蒼月の事は捜してくれるようだ。

その点に関しては安堵したものの、それでも翠からそれ以外の言葉が無いと言う事実は、カヤを不安にさせた。


(本当に嫌われたのかもしれない……)

そう考えると、気持ちがズブズブと沈んでいくのを感じたが、カヤは気を取り直し、己を奮い立たせた。

「律、伝えてくれてありがとう」

「構わない。それからな、朗報がある」

その言葉に、落ち込みっぱなしの心が少しだけ浮き上がった。