【完】絶えうるなら、琥珀の隙間

何ともミナトらしい厳しい口調だ。
それを聞くのは久しぶりだった。

優しいだけでは無い彼の言葉に、カヤは何か喝を入れられたような気になった。


「……うん、そうだね。いただきます」

カヤは静かに手を合わせ、黙々と粥を口にした。

空っぽだった胃に、温かなご飯が流れ込んでいく。

久しぶりの食事は普段の何倍も美味しくて、一口ごとに指先が温まっていくのを感じた。

「美味しい……」

ポツリと呟くと、カヤの食事風景を見ていたミナトが、口を開いた。

「子供、男の子だってな。名前は?」

「あ、うん……蒼月って言うの」

粥を口に運びながら答えると、ミナトが微笑んだ。

「良い名前だな。でかくなったか?」

「うん。今年で二つの齢だよ」

「そうか。大変な時期だろ。うろちょろ歩き回るだろうし」

先程の手厳しい言葉とは打って変わった、気さくで優しい口調。

きっとカヤが余計な事を考えなくても良いように、わざと話しかけてきてくれているのだろうと分かった。

「うん。なかなか言う事聴いてくれない。あーもう、ってなる時もあるけど、でもやっぱり凄く可愛いよ」

カヤも小さく笑みを浮かべた。
上がった自分の口角に、とても久しぶりに笑ったことを自覚する。


変わらないミナトの優しさに触れ、溢れんばかりの感謝の気持ちが湧いてきた。

それに加え、お腹も満たされてきたためだろうか。

カヤの中で先ほどまで激しく渦巻いていた焦り、自己嫌悪、不安の気持ちが、少し落ち着いたのを感じた。



「おう、大将。ちょっとばかし邪魔するぞ」

そう言って洞窟の中に入ってきた人物に、カヤもミナトも会話を中断した。

片手を上げながら近づいてきたのは、先ほど洞窟の外でミナトに声を掛けられていた『蔵光』と言う男だった。


「崖下の様子はどうだった?」

ミナトが尋ねると、蔵光は「どっこらしょ」と言いながら、カヤの向かい側にしゃがみ込んだ。

「近くに怪しい輩は居なかったな。念のため二、三人ほど見張りに置いておこうと思うんだけどよ、構わねえか?」

「勿論だ。頼む」

カヤは不思議な気持ちで目の前の二人を見つめた。

ミナトよりも随分年上に見える蔵光だが、一体どんな間柄なのだろう?
ミナトを『大将』と呼んでいたのも気になる所だ。


すると「了解」と頷いた蔵光の眼が、ふとカヤを見据えた。

蔵光を凝視していたため、思い切り視線がぶつかり合ってしまった。

しまった。失礼に思われただろうか。

「ご、ごめんなさっ……」

「で、この子が例の『大切な女の子』か?」

慌てて謝ろうとしたカヤは、驚きのあまり激しく咽返ってしまった。