【完】絶えうるなら、琥珀の隙間

ミナトは蔵光の背中を見送った後、カヤ達を洞窟の中へと案内した。

洞窟内に入ると、すぐに目の前の道が三又に別れていた。
ミナトは迷う事なく一番右の道を進んだので、カヤもそれに続いた。

歩きながら後ろを振り返ると、遠ざかっていく残りの二本の道の、更にその先でも道が分かれているのが見えた。

どうやら、かなり入り組んだ造りをしているらしい。



洞窟内には、転々と松明が据え置かれおり、足元を柔く照らしていた。

その灯りを頼りに、四人はどんどん奥へと進んだ。

しばらく歩くと、目の前に眩いほどの白い光が見えてきた。
松明の明かりでは無い。太陽の光だ。


洞窟を抜けた先には、平らな地面が広がっていた。

荒々しい洞窟の様子とは打って変わり、青々とした草が生え、所々に小さな花も咲き、そよそよと風に揺れている。

そし小さな草原は唐突に途切れ、その先は切り立った崖となっていた。

恐る恐る下を覗いてみれば、さらさらと流れる小川と、その向こう側に森が広がっているのが見える。

地形を見るに、崖の真下はつい先程カヤ達が砦の兵と戦った場所のようだった。


「こ、ここから飛び降りたの?」

いつの間にか隣に来ていた律に、カヤは愕然としながら聞いた。

「ああ。下からカヤの声が聞こえたからな」

律は事も無げに言った。

そうは言っても、頰には飛び降りた時に付いたであろう傷が出来ているし、矢が掠った肩は血が滲んでいる。

痛々しい事、この上ない。


「本当にごめん……怪我、大丈夫……?」

申し訳無い気持ちでいっぱいになりながら、そっと律の頬に触れる。
彼女は、ふっ、と柔和に微笑んだ。

「心配には及ばん。カヤが無事で良かった」

「律……」

「とりあえず、こっちに。衣を乾かそう。風邪を引く」

そう言われると、カヤも弥依彦も小川を渡ってきたため、ずぶ濡れだった。

ようやく寒さを思い出し、ぶるりと身震いをする。
カヤ達は洞窟内に戻ると、火を囲む様にして座った。



「あの……二人とも、どうしてこんな所に……?」

パチパチと爆ぜる炎に手を当てながら、カヤはミナトと律に尋ねた。

「二日前の夜、集落の方から閃光が見えたんだ」

「あ、それ多分、私だ……」

「ああ。そうだろうと思って、すぐに集落に向かったんだ」

どうやらカヤが決死の思いで打ち上げた合図は、律に届いていたらしい。

「そうしたら酷い有様だし、誰も居ないしで、これは只事では無いと思ってな。この数日間この洞窟を拠点にして、ずっとカヤ達を探してたんだ。ただ……」

律の顔が曇る。

「情けない事に、手がかり一つ掴めなくてな……さっきカヤ達を見つけられたのも、偶然だったんだ。すまない」