「そうか」と残念そうに翠が頷いたが、それでもカヤはまだ諦めきれなかった。
「ミナトッ……」
行かないで、と願いを込めて名を呼ぶ。
ミナトはそんなカヤを見ると、不意に翠に向かって口を開いた。
「翠様。宜しければ、琥珀と二人きりで話しをさせて頂く御許可を貰えませんか」
「ああ。家の中に居るから、話しが終わったら声を掛けてくれ」
翠とタケルは、気を利かせて家の中へと入って行った。
それを見届けた瞬間、カヤはミナトに勢いよく詰め寄った。
「行っちゃ駄目だよ!きっとハヤセミは、何が何でもミナトを探し出して殺すに決まってる!あいつはそう言う男だ!此処に居れば見つかる心配も少ないし、翠だってきっとミナトを匿ってくれるよ!」
一気に捲し立てたカヤを、ミナトは「まあ落ち着け」と制する。
全く持って落ち着けるはずが無かった。
たった一人で集落を出て行って、万が一に追手にでも見つかれば、さすがのミナトも逃げきれやしない。
そして捕まってしまえば、ハヤセミは間違いなく裏切者のミナトを葬るに決まっている。
何と言ってもあの男は、幼いミズノエを躊躇無く剣で貫いたような男なのだ。
「お願いだから行かないでっ……ミナトが死ぬのは嫌だ……」
情けなくも、めそめそするカヤに、ミナトが仕方無さそうな笑みを零した。
どうしてミナトがそんな風に笑うのかが分からなかった。
こちとら、こんなにも心配で堪らないと言うのに。
「……なあ、琥珀。砦に壁画があるの覚えてるか?」
べそを掻くカヤを黙って見下ろしていたミナトが、不意にそんな事を口にした。
確かに砦の正面入り口から入り、広間に向かうまでの道のりに壁画がある。
かつてあの国に舞い降りたと言われている金髪の髪を描いたものだ。
「うん……」
脈絡の無い話に首を傾げつつも、カヤはおずおずと頷く。
「俺、ガキの頃にあの壁画に落書きした事あってさ」
「……え?それ大丈夫だったの?」
聴いた話しによれば、あの壁画は先祖代々大切に受け継がれてきたものだ。
ハヤセミが翠にそう話していた。
「いや、大丈夫では無かったな。死ぬほど大人達に怒られた」
「でしょうね……」
言ってしまえばあの壁画は、建国の象徴とも言える重要な文化財だ。
それに落書きするなんぞ、下手すれば打ち首になっても可笑しくなさそうな話しである。
「でもさ」と、ミナトは言う。
「兄上が俺の事を庇ってくれてさ。あの兄上がだぞ?」
「……ハヤセミが?嘘だ」
よもや、あの男が誰かを庇うような真似をするはずが無い。
完全に疑ってかかるカヤに、ミナトは苦笑いを見せる。
「ミナトッ……」
行かないで、と願いを込めて名を呼ぶ。
ミナトはそんなカヤを見ると、不意に翠に向かって口を開いた。
「翠様。宜しければ、琥珀と二人きりで話しをさせて頂く御許可を貰えませんか」
「ああ。家の中に居るから、話しが終わったら声を掛けてくれ」
翠とタケルは、気を利かせて家の中へと入って行った。
それを見届けた瞬間、カヤはミナトに勢いよく詰め寄った。
「行っちゃ駄目だよ!きっとハヤセミは、何が何でもミナトを探し出して殺すに決まってる!あいつはそう言う男だ!此処に居れば見つかる心配も少ないし、翠だってきっとミナトを匿ってくれるよ!」
一気に捲し立てたカヤを、ミナトは「まあ落ち着け」と制する。
全く持って落ち着けるはずが無かった。
たった一人で集落を出て行って、万が一に追手にでも見つかれば、さすがのミナトも逃げきれやしない。
そして捕まってしまえば、ハヤセミは間違いなく裏切者のミナトを葬るに決まっている。
何と言ってもあの男は、幼いミズノエを躊躇無く剣で貫いたような男なのだ。
「お願いだから行かないでっ……ミナトが死ぬのは嫌だ……」
情けなくも、めそめそするカヤに、ミナトが仕方無さそうな笑みを零した。
どうしてミナトがそんな風に笑うのかが分からなかった。
こちとら、こんなにも心配で堪らないと言うのに。
「……なあ、琥珀。砦に壁画があるの覚えてるか?」
べそを掻くカヤを黙って見下ろしていたミナトが、不意にそんな事を口にした。
確かに砦の正面入り口から入り、広間に向かうまでの道のりに壁画がある。
かつてあの国に舞い降りたと言われている金髪の髪を描いたものだ。
「うん……」
脈絡の無い話に首を傾げつつも、カヤはおずおずと頷く。
「俺、ガキの頃にあの壁画に落書きした事あってさ」
「……え?それ大丈夫だったの?」
聴いた話しによれば、あの壁画は先祖代々大切に受け継がれてきたものだ。
ハヤセミが翠にそう話していた。
「いや、大丈夫では無かったな。死ぬほど大人達に怒られた」
「でしょうね……」
言ってしまえばあの壁画は、建国の象徴とも言える重要な文化財だ。
それに落書きするなんぞ、下手すれば打ち首になっても可笑しくなさそうな話しである。
「でもさ」と、ミナトは言う。
「兄上が俺の事を庇ってくれてさ。あの兄上がだぞ?」
「……ハヤセミが?嘘だ」
よもや、あの男が誰かを庇うような真似をするはずが無い。
完全に疑ってかかるカヤに、ミナトは苦笑いを見せる。
