「ふた、ご……?」
翠は瞬き一つすらしないまま、目の前の片割れを見つめていた。
「……私の姉上……だと……?」
タケルもまた、開いた口が塞がらない様子であった。
二人の頭の中が、いかに驚愕に満ちているのかが手に取るように分かった。
今まで、たった二人の兄弟だと信じて生きてきたと言うのに、突然姉を名乗る人間が現れたのだ。
全く持って無理も無い反応であった。
(双子……神官……?)
そして疑惑を持ち掛けたカヤ本人でさえ、溢れ出る驚きを隠しようが無かった。
兄妹どころの話では無かった。
翠も律も、同じ時を持って産まれ出た双子だったのだ。
しかも、本来ならば律が神官になるはずだったとは、一体。
「あの……この国の神官となるはずだった……って、どういう事なの?」
言葉を発せなさそうな翠とタケルに代わり、カヤは静まり返っている空気を、勇気をもって切り裂いた。
「こんな見た目の人間が神官になれると思うか?」
カヤは、あ、と声を上げた。
律が山奥で隠れ住んでいた経緯がようやく見えてきたのだ。
男性が神官となれば世が乱れる、と言われているこの国では、本来ならば翠ではなく女性の律が神官の地位に立つのが自然だろう。
けれど、いざ産まれ出た待望の女児はとても『普通』とは言い難い見た目をしていた。
"―――――異質な髪の神官を誰が受け入れますか!神官は絶対的な信仰対象にならねばならないのです"
かつてタケルはそう言っていた。
国を治める神官が見目を理由に恐れられてしまう訳にはいかない。
そのため律は、正当な女性でありながらも、産まれたその瞬間からその道の外側へと追いやられてしまったのだ。
そうして翠の母上は、律を人知れず山奥に隠す事で、律が産まれた事実すらも隠したのだろう。
カヤには、律がずっとずっと苛まれてきたであろう寂しさ、悔しさ、怒りが痛い程に分かった。
見た目を理由に虐げられ、安寧から遠ざけられ、そして大切なものをことごとく奪われていく。
(何もしてないのに)
理不尽だ、と何度大声で叫んだって何も変わりはしない。
だってそれが世界の理なのだ。
この世界に生を受けたからには、それに身を任せるしかない。
どれだけ胸を掻き毟りたいほどの絶望に犯されようと、律もカヤも、黙って耐えるしか。
「律……」
するすると、涙が頬を伝っていた。
律に同情していたのかもしれないし、自分の境遇と重ねて見てしまったのかもしれない。
傲慢とも言える涙だったが、それでも律はそれを優しく拭ってくれた。
細やかで優美な指先は丁寧に雫を掬い、離れて行く。
翠は瞬き一つすらしないまま、目の前の片割れを見つめていた。
「……私の姉上……だと……?」
タケルもまた、開いた口が塞がらない様子であった。
二人の頭の中が、いかに驚愕に満ちているのかが手に取るように分かった。
今まで、たった二人の兄弟だと信じて生きてきたと言うのに、突然姉を名乗る人間が現れたのだ。
全く持って無理も無い反応であった。
(双子……神官……?)
そして疑惑を持ち掛けたカヤ本人でさえ、溢れ出る驚きを隠しようが無かった。
兄妹どころの話では無かった。
翠も律も、同じ時を持って産まれ出た双子だったのだ。
しかも、本来ならば律が神官になるはずだったとは、一体。
「あの……この国の神官となるはずだった……って、どういう事なの?」
言葉を発せなさそうな翠とタケルに代わり、カヤは静まり返っている空気を、勇気をもって切り裂いた。
「こんな見た目の人間が神官になれると思うか?」
カヤは、あ、と声を上げた。
律が山奥で隠れ住んでいた経緯がようやく見えてきたのだ。
男性が神官となれば世が乱れる、と言われているこの国では、本来ならば翠ではなく女性の律が神官の地位に立つのが自然だろう。
けれど、いざ産まれ出た待望の女児はとても『普通』とは言い難い見た目をしていた。
"―――――異質な髪の神官を誰が受け入れますか!神官は絶対的な信仰対象にならねばならないのです"
かつてタケルはそう言っていた。
国を治める神官が見目を理由に恐れられてしまう訳にはいかない。
そのため律は、正当な女性でありながらも、産まれたその瞬間からその道の外側へと追いやられてしまったのだ。
そうして翠の母上は、律を人知れず山奥に隠す事で、律が産まれた事実すらも隠したのだろう。
カヤには、律がずっとずっと苛まれてきたであろう寂しさ、悔しさ、怒りが痛い程に分かった。
見た目を理由に虐げられ、安寧から遠ざけられ、そして大切なものをことごとく奪われていく。
(何もしてないのに)
理不尽だ、と何度大声で叫んだって何も変わりはしない。
だってそれが世界の理なのだ。
この世界に生を受けたからには、それに身を任せるしかない。
どれだけ胸を掻き毟りたいほどの絶望に犯されようと、律もカヤも、黙って耐えるしか。
「律……」
するすると、涙が頬を伝っていた。
律に同情していたのかもしれないし、自分の境遇と重ねて見てしまったのかもしれない。
傲慢とも言える涙だったが、それでも律はそれを優しく拭ってくれた。
細やかで優美な指先は丁寧に雫を掬い、離れて行く。
