「あのなあ、こうなるのは分かっていた事だろうが。男ならシャキッとしろ!」
バンッ!と思いっきり背中を叩かれ、「いってぇ!」ミナトが声を上げた。
「何すんだ!」
「眼を覚まさせてやったんだ。さっさと行って来い、馬鹿」
吐き捨てるように言った律を睨み付け、ミナトは足早に部屋を出て行った。
「全く……」
ふう、と息を付いてミナトを見送った律は、くるりとカヤに向き直った。
「すまない、カヤ。騒がしくして……」
「律!」
「わっ」
寝台を飛び降りたカヤは、律の両肩を思い切り掴んだ。
唐突に迫られ、律は驚きの声を上げながらも、まだふらふらのカヤの身体を両腕で支える。
「ねえっ、あの後どうなったの!?皆はっ……翠様は無事なの!?」
ガクガクと律を揺さぶりながら問えば、律は苦笑いしながら頷いた。
「無事だよ。あの騒ぎで死人は出ていないそうだ」
その言葉を聞き、言いようの無い安堵感が身体中を巡る。
「良かった……」
「まあ私も逃げた身だから、今はそれしか分からないんだがな……」
あ、と思った。
大変に馬鹿な事だが、カヤはようやく思い出した。
カヤを連れ去ろうとしたのはミナトだが、目の前の律は間違いなくそれに加担したのだ。
(と言う事は、ミナトの仲間……?)
突然冷静になり、カヤは縋りつくように触れていた律からパッと手を放した。
カヤの変化に気が付いたのか、律は「まあ、そうなるか」と苦笑いを零す。
しかし、その眉を下げた笑顔が存外に寂し気で、何故だかカヤは感じなくても良い筈の罪悪感というものを自覚してしまった。
いきなり消えて、そしてまたいきなり現れた、謎だらけの律。
相変わらず、視界に映してしまえば逸らすのを躊躇するほどに、律は全てが端麗だった。
(……敵だなんて思いたくない)
以前会った時も感じた事だが、不思議と彼女はカヤにそう思わせた。
否――――単純に、カヤがそう思いたいだけなのかもしれない。
「あの……律はこの国の人?ミナトと知り合いなの……?」
とにかく謎だらけの律の立ち位置を知らなければ。
警戒すべきなのか、そうでないのかをはっきりとさせたくて、おずおずと質問した。
「あの男とは知り合いだが、私はこの国の産まれでは無いよ。ただ、私の目的のためには、あいつと手を組んだ方が都合が良くてな」
何処となく曖昧な回答だったため、彼女が敵なのか味方なのか判断が付かなかった。
渋い顔をしているカヤに気が付いたのか、律は小さく笑みを浮かべる。
「私はカヤの敵では無いから安心しろ。申し訳ない事に完全な味方とも言えないがな……まあでも、カヤの力になりたいとは思っている」
予想外の言葉に、カヤはパチパチと眼を瞬いた。
よもや、そんな心強過ぎる言葉が律から発せられるとは思わなかったのだ。
バンッ!と思いっきり背中を叩かれ、「いってぇ!」ミナトが声を上げた。
「何すんだ!」
「眼を覚まさせてやったんだ。さっさと行って来い、馬鹿」
吐き捨てるように言った律を睨み付け、ミナトは足早に部屋を出て行った。
「全く……」
ふう、と息を付いてミナトを見送った律は、くるりとカヤに向き直った。
「すまない、カヤ。騒がしくして……」
「律!」
「わっ」
寝台を飛び降りたカヤは、律の両肩を思い切り掴んだ。
唐突に迫られ、律は驚きの声を上げながらも、まだふらふらのカヤの身体を両腕で支える。
「ねえっ、あの後どうなったの!?皆はっ……翠様は無事なの!?」
ガクガクと律を揺さぶりながら問えば、律は苦笑いしながら頷いた。
「無事だよ。あの騒ぎで死人は出ていないそうだ」
その言葉を聞き、言いようの無い安堵感が身体中を巡る。
「良かった……」
「まあ私も逃げた身だから、今はそれしか分からないんだがな……」
あ、と思った。
大変に馬鹿な事だが、カヤはようやく思い出した。
カヤを連れ去ろうとしたのはミナトだが、目の前の律は間違いなくそれに加担したのだ。
(と言う事は、ミナトの仲間……?)
突然冷静になり、カヤは縋りつくように触れていた律からパッと手を放した。
カヤの変化に気が付いたのか、律は「まあ、そうなるか」と苦笑いを零す。
しかし、その眉を下げた笑顔が存外に寂し気で、何故だかカヤは感じなくても良い筈の罪悪感というものを自覚してしまった。
いきなり消えて、そしてまたいきなり現れた、謎だらけの律。
相変わらず、視界に映してしまえば逸らすのを躊躇するほどに、律は全てが端麗だった。
(……敵だなんて思いたくない)
以前会った時も感じた事だが、不思議と彼女はカヤにそう思わせた。
否――――単純に、カヤがそう思いたいだけなのかもしれない。
「あの……律はこの国の人?ミナトと知り合いなの……?」
とにかく謎だらけの律の立ち位置を知らなければ。
警戒すべきなのか、そうでないのかをはっきりとさせたくて、おずおずと質問した。
「あの男とは知り合いだが、私はこの国の産まれでは無いよ。ただ、私の目的のためには、あいつと手を組んだ方が都合が良くてな」
何処となく曖昧な回答だったため、彼女が敵なのか味方なのか判断が付かなかった。
渋い顔をしているカヤに気が付いたのか、律は小さく笑みを浮かべる。
「私はカヤの敵では無いから安心しろ。申し訳ない事に完全な味方とも言えないがな……まあでも、カヤの力になりたいとは思っている」
予想外の言葉に、カヤはパチパチと眼を瞬いた。
よもや、そんな心強過ぎる言葉が律から発せられるとは思わなかったのだ。
