「来い、ミズノエ」
静やかに言い放った翠に、ミナトは口角を上げた。
「はっ、一度貴女とやり合ってみたかったんです、よっ!」
ガギィン!
二本の刃が激しくぶつかり合った。
渾身とも言える力で交わる刃を押すミナトに、翠もまた全体重を込めてそれを押し返す。
体格差から見て、力比べではミナトの方が上なのが明らかだった。
しかし簡単にやられるような翠でもない。
ズズッ、と翠のつま先が地面を滑った時、絶妙とも言える頃合いで、翠がヒラリと身を翻した。
力を込める対象を失ったミナトが体勢を崩し、そこに息付く間もなく翠が突きを放つ。
ミナトは、首を捻ってそれをどうにかかわした。
すぐに体勢を整えたミナトが、目にも止まらぬ速さで逆袈裟気味に刃を振るい、翠はそれを間一髪で受ける。
ガリガリガリッ!と、刃と刃が擦れる音がして、刀身は僅かに翠を逸れた。
が、その斬撃は、完全には免れなかった。
「くっ……」
翠の顔が歪む。
二の腕の内側部分の衣が、線を引いたように切り裂かれていた。
じわり、とそこから血が滲み、真っ白な衣に染み出していくのが見えた。
翠は羽織っていた衣を乱暴に脱ぎ捨てると、再び剣を構える。
ポタ、ポタ、と翠の腕を伝って、柄の先から血液が止め処なく滴っていた。
ミナトもまた、静かに翠に剣を向けた。
その顔には勝利を確信したような表情が浮かんでいる。
「その傷ではもう剣は振れないのでは?」
「そう思うなら止めを刺しに来い」
挑発するような言った翠の口元にも笑みが浮かんでいた。
ミナトは訝し気に眼を細めると、ゆっくりと重心を落とし、剣を右腰の後ろまで引いた。
次の一突きで、翠を仕留める気だ、と分かった。
「っ、うらあぁあぁあ!」
激情が乗った刃が、真っ直ぐに翠に向かって放たれる。
深手を負った翠の腕が、その重たい一撃を受け止めきれるはずが無かった。
「すいっ……」
声にならない声で叫んだ時、翠の両手が―――――握っていたはずの剣を放りだした。
「なっ……」
予想だにしない翠の行動に、ミナトが驚愕の声を上げる。
身軽になった翠が歯を食いしばりながら身を捩った。
勢い良く突き出されたミナトの刃が、紙一重のところで翠の真横の空気を切り裂いていく。
それを横目に、翠は剣を握るミナトの右手を己の左手でガッチリと握りこみ、強く引き寄せた。
刀身ギリギリの箇所を固く握りこまれ手首ごと固定されているため、引っ張られるようにしてミナトの右半身が傾く。
咄嗟にミナトが踏ん張ったと同時、翠は刃の平たい地の部分を自分に向けさせると、そこに右腕を当てて強く押した。
「ぐ、ぅ……」
手首、そして刀身から、それぞれ逆方向に無茶な力を加えられ、ミナトの指が遂に剣を取り落とした。
ガランッ!と重たい音と共に、ミナトの剣が地面を叩く。
そして、驚愕しているミナトの腹に、ドスッ――――翠の振り上げた膝がめり込んだ。
静やかに言い放った翠に、ミナトは口角を上げた。
「はっ、一度貴女とやり合ってみたかったんです、よっ!」
ガギィン!
二本の刃が激しくぶつかり合った。
渾身とも言える力で交わる刃を押すミナトに、翠もまた全体重を込めてそれを押し返す。
体格差から見て、力比べではミナトの方が上なのが明らかだった。
しかし簡単にやられるような翠でもない。
ズズッ、と翠のつま先が地面を滑った時、絶妙とも言える頃合いで、翠がヒラリと身を翻した。
力を込める対象を失ったミナトが体勢を崩し、そこに息付く間もなく翠が突きを放つ。
ミナトは、首を捻ってそれをどうにかかわした。
すぐに体勢を整えたミナトが、目にも止まらぬ速さで逆袈裟気味に刃を振るい、翠はそれを間一髪で受ける。
ガリガリガリッ!と、刃と刃が擦れる音がして、刀身は僅かに翠を逸れた。
が、その斬撃は、完全には免れなかった。
「くっ……」
翠の顔が歪む。
二の腕の内側部分の衣が、線を引いたように切り裂かれていた。
じわり、とそこから血が滲み、真っ白な衣に染み出していくのが見えた。
翠は羽織っていた衣を乱暴に脱ぎ捨てると、再び剣を構える。
ポタ、ポタ、と翠の腕を伝って、柄の先から血液が止め処なく滴っていた。
ミナトもまた、静かに翠に剣を向けた。
その顔には勝利を確信したような表情が浮かんでいる。
「その傷ではもう剣は振れないのでは?」
「そう思うなら止めを刺しに来い」
挑発するような言った翠の口元にも笑みが浮かんでいた。
ミナトは訝し気に眼を細めると、ゆっくりと重心を落とし、剣を右腰の後ろまで引いた。
次の一突きで、翠を仕留める気だ、と分かった。
「っ、うらあぁあぁあ!」
激情が乗った刃が、真っ直ぐに翠に向かって放たれる。
深手を負った翠の腕が、その重たい一撃を受け止めきれるはずが無かった。
「すいっ……」
声にならない声で叫んだ時、翠の両手が―――――握っていたはずの剣を放りだした。
「なっ……」
予想だにしない翠の行動に、ミナトが驚愕の声を上げる。
身軽になった翠が歯を食いしばりながら身を捩った。
勢い良く突き出されたミナトの刃が、紙一重のところで翠の真横の空気を切り裂いていく。
それを横目に、翠は剣を握るミナトの右手を己の左手でガッチリと握りこみ、強く引き寄せた。
刀身ギリギリの箇所を固く握りこまれ手首ごと固定されているため、引っ張られるようにしてミナトの右半身が傾く。
咄嗟にミナトが踏ん張ったと同時、翠は刃の平たい地の部分を自分に向けさせると、そこに右腕を当てて強く押した。
「ぐ、ぅ……」
手首、そして刀身から、それぞれ逆方向に無茶な力を加えられ、ミナトの指が遂に剣を取り落とした。
ガランッ!と重たい音と共に、ミナトの剣が地面を叩く。
そして、驚愕しているミナトの腹に、ドスッ――――翠の振り上げた膝がめり込んだ。
