今までで一番の暴れっぷりを見せながら、女は必死の形相で叫ぶ。
「おい、やめろ!今すぐやめろ!」
「人のこと殺しかけておいて、まさか恥ずかしいとでも言う気か?」
「言うか!私は男が嫌いなんだ!触るんじゃない!」
「何を戯言を」と鼻で嗤った翠が、いよいよお情け程度に残っていた肌着に手を掛け、ぐっと力を込めた。
「待って下さい、翠様!」
その手を鷲掴みにしたのは、カヤだった。
「……下がっていなさい、カヤ」
氷点下のような翠の顔に気圧されかけるが、どうにか負けじと踏ん張る。
「さ、下がりません!どうかそれ以上はお止め下さい!」
無謀にも女と翠の間にぐいぐいと身体を割り込ませ、カヤは必死に訴えた。
(怒られる。絶対に怒られる。何が何でも怒られる)
そう分かっては居るものの、もう目の前の光景を見ていられなかった。
カヤは翠の前に膝を付くと、ぎゅう、とその右手を両手で強く握りしめた。
「この場にはタケル様もいらっしゃいます。翠様は、その……女性ではありますが、この者は肌を暴かれる事を酷く嫌がっております」
じっ、と翠を見つめるせいで眼が乾いて潤んできたが、必死に瞬きをしないように堪える。
「もしも私が同じ立場だったら、このような場で身体を晒されるのはとても辛いです。どうか、どうか、ご容赦いただけませんか……?」
どれだけ美しかろうと、やはりまごうことなき男性だ。
翠にはその言葉が、雪中花の解毒並みに効いたらしい。
ぐっ、と口籠った翠は、やがて溜息を吐きながら俯いた。
「……分かった」
小さく呟いた翠は、それから立ち尽くしていたタケルを振り返る。
「タケル。誰か腕っ節の強い女を連れてきてくれないか」
「おい、待て」
不意に女が口を挟んだ。
「この娘にやらせろ。それなら許可してやる。但し、お前達二人はこの部屋を出ろ」
驚いて女を見やったカヤとは裏腹に、翠はまたもや表情を全て削ぎ落とした。
「……お前は自分が命令出来る立場だと思っているのか?」
「良いか、この娘以外の者が私に触れてみろ。その指を噛み千切ってやる」
「では、そうなる前にお前の腕を切り落としてやろう」
静かに立ち上がった翠が、納めていたはずの剣の柄に再び手を掛けた。
今にも抜きそうな勢いだ。
「す、翠様!この者もそう申しておりますし、私が請け負います!」
カヤは慌てて二人の間に立ちはだかり、少しでも互いの姿を見えなくしようと躍起になった。
「駄目に決まっているだろう。危険すぎる」
「ですが、ここまで縛られていては何も出来ません。さすがの私でも大丈夫です」
カヤの間違ってはいない意見に、翠はしばらく悩む様子見せたが、やがて仕方無さそうにまた息を吐くと、女に向かって言い放った。
「おい、女。この娘に傷一つでも負わせてみろ。腕どころか首を刎ねてやる」
脅された本人は、ふんっと鼻を鳴らす。
「私は嘘を付かん」
「どうだかな」と忌々し気に呟き、翠は潔く踵を返した。
その後を心配そうな表情のタケルが続く。
「おい、やめろ!今すぐやめろ!」
「人のこと殺しかけておいて、まさか恥ずかしいとでも言う気か?」
「言うか!私は男が嫌いなんだ!触るんじゃない!」
「何を戯言を」と鼻で嗤った翠が、いよいよお情け程度に残っていた肌着に手を掛け、ぐっと力を込めた。
「待って下さい、翠様!」
その手を鷲掴みにしたのは、カヤだった。
「……下がっていなさい、カヤ」
氷点下のような翠の顔に気圧されかけるが、どうにか負けじと踏ん張る。
「さ、下がりません!どうかそれ以上はお止め下さい!」
無謀にも女と翠の間にぐいぐいと身体を割り込ませ、カヤは必死に訴えた。
(怒られる。絶対に怒られる。何が何でも怒られる)
そう分かっては居るものの、もう目の前の光景を見ていられなかった。
カヤは翠の前に膝を付くと、ぎゅう、とその右手を両手で強く握りしめた。
「この場にはタケル様もいらっしゃいます。翠様は、その……女性ではありますが、この者は肌を暴かれる事を酷く嫌がっております」
じっ、と翠を見つめるせいで眼が乾いて潤んできたが、必死に瞬きをしないように堪える。
「もしも私が同じ立場だったら、このような場で身体を晒されるのはとても辛いです。どうか、どうか、ご容赦いただけませんか……?」
どれだけ美しかろうと、やはりまごうことなき男性だ。
翠にはその言葉が、雪中花の解毒並みに効いたらしい。
ぐっ、と口籠った翠は、やがて溜息を吐きながら俯いた。
「……分かった」
小さく呟いた翠は、それから立ち尽くしていたタケルを振り返る。
「タケル。誰か腕っ節の強い女を連れてきてくれないか」
「おい、待て」
不意に女が口を挟んだ。
「この娘にやらせろ。それなら許可してやる。但し、お前達二人はこの部屋を出ろ」
驚いて女を見やったカヤとは裏腹に、翠はまたもや表情を全て削ぎ落とした。
「……お前は自分が命令出来る立場だと思っているのか?」
「良いか、この娘以外の者が私に触れてみろ。その指を噛み千切ってやる」
「では、そうなる前にお前の腕を切り落としてやろう」
静かに立ち上がった翠が、納めていたはずの剣の柄に再び手を掛けた。
今にも抜きそうな勢いだ。
「す、翠様!この者もそう申しておりますし、私が請け負います!」
カヤは慌てて二人の間に立ちはだかり、少しでも互いの姿を見えなくしようと躍起になった。
「駄目に決まっているだろう。危険すぎる」
「ですが、ここまで縛られていては何も出来ません。さすがの私でも大丈夫です」
カヤの間違ってはいない意見に、翠はしばらく悩む様子見せたが、やがて仕方無さそうにまた息を吐くと、女に向かって言い放った。
「おい、女。この娘に傷一つでも負わせてみろ。腕どころか首を刎ねてやる」
脅された本人は、ふんっと鼻を鳴らす。
「私は嘘を付かん」
「どうだかな」と忌々し気に呟き、翠は潔く踵を返した。
その後を心配そうな表情のタケルが続く。
