【完】絶えうるなら、琥珀の隙間

「お前こそ女の足を鷲掴にするなんて、躾がなっていないな」

まるで挑発するように言って、女は目を細める。

「――――なんとも無作法な『男』だ」

女の言葉に、空気が凍った。


「……なんだと?」

僅かに動揺したような翠の声を、女は見逃さなかった。


地面を蹴って疾風のように向かってきた女に対し、翠が一瞬遅れて剣を構える。

しかし構え終わる前に、すでに強烈な蹴りは翠の顔面に向かって放たれていた――――


「翠様!」

突如、真横から現れた大きな塊が、女をふっ飛ばした。

「ぐ、ぁっ……!」

タケルに肩で体当たりされた女は、牢の壁に勢いよく叩きつけられた。

そのままズルズルと崩れ落ちる女の背に、間髪入れず翠が乗り上げ、手首を捻り上げる。

「くっ……そ、が……!」

痛みに呻いた女が、刃を地面に取り落とした。

そこにタケルも加わり、二人がかりで押え付けられた女は、とうとう身動きが取れなくなった。


「お前の眼は節穴か?どうやったら私が男に見える?」

膝で容赦なく女の肩を押さえながら、翠が冷たく吐き捨てる。

「うるっ、さい!放せ!私に触るな、下衆共!」

完全に拘束されているにも関わらず、それでも女はジタバタと足掻いた。


色々な事が衝撃的すぎて立ち尽くしていたカヤは、翠とタケルが一瞬目を見合わせた事に気が付いた。

二人とも、カヤと同じ疑問を抱いているに違いない。

――――何故この人は、翠が男だと分かったのだろう?



「タケル、この女を柱に縛り付けるぞ!手を緩めるな!」

「はい!」

活きの良い魚以上に暴れまくっている女を、二人はどうにか柱に括りつけた。

今度は、足首は念入りに三重に巻かれ、更には間接外しが出来ないよう、両手首は柱を回すようにして縛られた。


「なんて女だ……」

疲弊したように息を吐き、地面に落ちていた刃を拾い上げた翠は、呆れたように言った。

「お前の所持品は、兵が全て押収したはずだ。何処に隠し持ってた?」

「……言うか、間抜け」

ぼそっと呟かれた罵倒は、無いに等しかった翠の慈悲を根こそぎ奪い取っていた。

「お前がそのつもりなら仕方無い」

翠は女の前にしゃがむと、怖いくらい美しい微笑を浮かべた。

「脱げ」

「……は?」

「全て脱げ。徹底的に調べてやる」

そう言って衣の襟元を勢い良く掴んだ翠に、女は眼を引ん剥いた。

勿論カヤも、だ。



「ふっ……ざけるな!もうこれ以上何も持ってなどいない!」

「信じて欲しいなら、もう少しそれに見合った行動をするんだな。……っと、腕が通らないのか。悪いが破るぞ」

「お、おいコラ!やめろ!」

ビリビリ躊躇なく衣を破り、翠はそれを床に投げ捨てていく。

あっという間に、女は胸までの薄い肌着一枚になってしまった。

真上から覗けば、胸の谷間がはっきりと見えてしまいそうだ。