衣に隠れていて分からなかったが、ミナトの上半身もまた包帯だらけだった。
特に矢が刺さったであろう脇腹は、かなり厚めに包帯が巻かれている。
ユタが包帯を解いていき、そして露わになったミナトの素肌を眼にしたカヤは言葉を失った。
一番に眼を引いたのは、勿論矢傷だった。
その部分だけ皮膚内部の赤みが見えて、じくじくとしている。
しかし、目につく傷はそれだけでは無かった。
治りかけて瘡蓋になっている傷もあれば、完全に傷は塞がっているが、白く引き攣った様な跡になっている傷もある。それはもう数えきれないほどだ。
一体どんな生活をしたら、こんなに傷だらけになれるのか。
「これ、ほとんど古傷よ」
苦笑い気味に言いながら、ユタは小さな器を取り出した。
中には黄色くてドロリとした軟膏が入っていた。
何やら鼻に付く嫌な臭いがする。
ユタは慣れた手つきでそれをミナトの傷跡に塗り始めた。
「ミナトってば、怪我してくるのが趣味なのよ。変わってるでしょ」
「ああ?……人聞きの悪い……」
「本当の事でしょう?全く、屋敷一の暴れ馬なんだから……仕事を増やさないで欲しいものだわ」
「……るせえな……仕事柄、仕方ねぇんだっつの……」
「分かってるわよ。まあその分、体力馬鹿だから傷の治りも早いけど。今回の傷も案外早く治るかもね。だから安心しなさいよ、カヤ」
「ね?」とユタが人差し指に軟膏を付けたまま、こちらを振り返る。
しかしカヤは言葉を返せなかった。
"暴れ馬"
何の気無しに言ったであろうユタの言葉に、思い出したのだ。
本当に間抜けで、本当に最低な事だが、今頃。
「……ねえ、リンはどうなったの……?」
腹に矢が刺さり、崖から落ちて行ったミナトの大切なあの美しい馬。
リンがどうなったのか、カヤはまだ聞いていなかった。
カヤが疑問を口にした瞬間、二人の動きが見事なほどに止まった。
二人が意味ありげに視線を交わしたのを、カヤは見逃さなかった。
「……今、ヤガミ達が捜してる」
しばしの沈黙後、ミナトがぽつりとそう言った。
その言葉が意味しているのは、つまり。
「まだ見つかって……ないって事……?」
カヤは膳の所から助け出されて、丸々二日間眠っていた。
しかも崖で腹を蹴られて気を失ってから、膳の家に運ばれるまでも、それなりの時間が経っていたはずだ。
崖から落ちた時点で例えリンが生きていたのだとしても、まともに動けはしないだろう。
それを、この炎天下の中、手負いの状態で二日間、いや三日間近くも呑まず食わずなんて―――――
「……あいつなら大丈夫だ……お前は、気にすんな……」
頭が真っ白になったカヤの耳に、ミナトの慰めが聞こえた。
けれどカヤが見てしまった。
先ほどカヤの涙を拭ってくれた包帯だらけの指が、固く固く握りしめられているのを。
特に矢が刺さったであろう脇腹は、かなり厚めに包帯が巻かれている。
ユタが包帯を解いていき、そして露わになったミナトの素肌を眼にしたカヤは言葉を失った。
一番に眼を引いたのは、勿論矢傷だった。
その部分だけ皮膚内部の赤みが見えて、じくじくとしている。
しかし、目につく傷はそれだけでは無かった。
治りかけて瘡蓋になっている傷もあれば、完全に傷は塞がっているが、白く引き攣った様な跡になっている傷もある。それはもう数えきれないほどだ。
一体どんな生活をしたら、こんなに傷だらけになれるのか。
「これ、ほとんど古傷よ」
苦笑い気味に言いながら、ユタは小さな器を取り出した。
中には黄色くてドロリとした軟膏が入っていた。
何やら鼻に付く嫌な臭いがする。
ユタは慣れた手つきでそれをミナトの傷跡に塗り始めた。
「ミナトってば、怪我してくるのが趣味なのよ。変わってるでしょ」
「ああ?……人聞きの悪い……」
「本当の事でしょう?全く、屋敷一の暴れ馬なんだから……仕事を増やさないで欲しいものだわ」
「……るせえな……仕事柄、仕方ねぇんだっつの……」
「分かってるわよ。まあその分、体力馬鹿だから傷の治りも早いけど。今回の傷も案外早く治るかもね。だから安心しなさいよ、カヤ」
「ね?」とユタが人差し指に軟膏を付けたまま、こちらを振り返る。
しかしカヤは言葉を返せなかった。
"暴れ馬"
何の気無しに言ったであろうユタの言葉に、思い出したのだ。
本当に間抜けで、本当に最低な事だが、今頃。
「……ねえ、リンはどうなったの……?」
腹に矢が刺さり、崖から落ちて行ったミナトの大切なあの美しい馬。
リンがどうなったのか、カヤはまだ聞いていなかった。
カヤが疑問を口にした瞬間、二人の動きが見事なほどに止まった。
二人が意味ありげに視線を交わしたのを、カヤは見逃さなかった。
「……今、ヤガミ達が捜してる」
しばしの沈黙後、ミナトがぽつりとそう言った。
その言葉が意味しているのは、つまり。
「まだ見つかって……ないって事……?」
カヤは膳の所から助け出されて、丸々二日間眠っていた。
しかも崖で腹を蹴られて気を失ってから、膳の家に運ばれるまでも、それなりの時間が経っていたはずだ。
崖から落ちた時点で例えリンが生きていたのだとしても、まともに動けはしないだろう。
それを、この炎天下の中、手負いの状態で二日間、いや三日間近くも呑まず食わずなんて―――――
「……あいつなら大丈夫だ……お前は、気にすんな……」
頭が真っ白になったカヤの耳に、ミナトの慰めが聞こえた。
けれどカヤが見てしまった。
先ほどカヤの涙を拭ってくれた包帯だらけの指が、固く固く握りしめられているのを。
