「……ごめん。なんでもない」
情けなさに耐え切れなくて謝ってしまった。
翠の顔を見れない。
馬鹿、馬鹿。
何を口走ってるんだ。
(だって、翠があんまりにも一人で歩いていこうとするから)
カヤなんて居なくても良いのだ、という事実をまざまざと見せつけられた気がして悲しくなったのだ。
ぐっと唇を噛み、カヤは不甲斐ない己の心を締め出した。
「とにかくさ、せめてタケル様を拒むのは止めて差し上げて。物凄く翠の事を心配なさってたから。唯一のご兄弟でしょ?」
翠の眼を見ないまま、ひとまずそれだけを伝えた。
カヤの思いなどより、今は血の繋がっているタケルの気持ちが第一だ。
「…………だって、大事なんだよ」
小さな小さな声が聞こえ、カヤは視線を戻した。
翠はぼんやりとした眼で天井を見つめている。
「ん?タケル様が?」
問いかけると「うん」と言う返事。
翠が何かを言おうとしてくれている。
それに気が付き、カヤはそっと彼の頭に触れて撫でた。
ゆっくりで良いんだよ、と意味を込めて。
「……心の底から大事なんだ。何があっても守りたいと思うし、俺が必ず支えになりたいと思ってる」
気を付けなければ分からない程だが、その声は確かに震えを帯びていた。
翠は右腕で目元を覆って、消え入りそうな声で言う。
「俺がこんな事言っちゃ駄目だって分かってるけど、本当は……この国で一番大切な存在なんだ……」
それは、神官の言葉と言うよりもただの一人の人間としての言葉だった。
「翠……」
あまりにも彼らしからぬ発言をするので、カヤは驚いてしまった。
そして、
「……だから二人には揺らいだところを見せたくない」
そんな発言で更に驚いた。
(え?二人?)
なんて可哀想に、と哀れになってしまった。
どうやら熱のせいで数の数え方が分からなくなってしまったらしい。
「ねえ、大丈夫?タケル様は一人だよ……?」
心底心配になったカヤは、翠の額に手を当てた。
相変わらず熱い。
話している言葉は割とはっきりとしているが、もしや意識朦朧としているのだろうか。
「……はあ?何言ってんだ?」
翠は怪訝そうに眉を寄せると、カヤの手を握って額から退かした。
真剣なその瞳がカヤの視線を絡めとる。
「俺、お前の事すごく大事にしてるんだけど」
あまりにも度肝を抜かれる言葉だった。
カヤは石化した。
「……え?もしかしてその二人の中に私も入ってる?」
呆けたように呟くと、翠が気分を害したように目を細めた。
「自覚無しかよ……」
ぼそっと言われ、カヤは雷に打たれた様な衝撃を受けた。
(え?え?私?)
守りたいって言ったのも、支えになりたいって言ったのも。
この国で一番大切な存在だって言ったのも。
(……タケル様だけじゃなくて、私も……?)
「っ、」
――――ようやく理解した時、カヤは顔から火が出そうになった。
そして突然、翠を膝枕しているこの状況が死にそうなくらい恥ずかしくなった。
「す、翠っ……頭退かして!」
慌てて翠の頭の下から膝を引き抜くと、カヤはずりずりと後ずさった。
情けなさに耐え切れなくて謝ってしまった。
翠の顔を見れない。
馬鹿、馬鹿。
何を口走ってるんだ。
(だって、翠があんまりにも一人で歩いていこうとするから)
カヤなんて居なくても良いのだ、という事実をまざまざと見せつけられた気がして悲しくなったのだ。
ぐっと唇を噛み、カヤは不甲斐ない己の心を締め出した。
「とにかくさ、せめてタケル様を拒むのは止めて差し上げて。物凄く翠の事を心配なさってたから。唯一のご兄弟でしょ?」
翠の眼を見ないまま、ひとまずそれだけを伝えた。
カヤの思いなどより、今は血の繋がっているタケルの気持ちが第一だ。
「…………だって、大事なんだよ」
小さな小さな声が聞こえ、カヤは視線を戻した。
翠はぼんやりとした眼で天井を見つめている。
「ん?タケル様が?」
問いかけると「うん」と言う返事。
翠が何かを言おうとしてくれている。
それに気が付き、カヤはそっと彼の頭に触れて撫でた。
ゆっくりで良いんだよ、と意味を込めて。
「……心の底から大事なんだ。何があっても守りたいと思うし、俺が必ず支えになりたいと思ってる」
気を付けなければ分からない程だが、その声は確かに震えを帯びていた。
翠は右腕で目元を覆って、消え入りそうな声で言う。
「俺がこんな事言っちゃ駄目だって分かってるけど、本当は……この国で一番大切な存在なんだ……」
それは、神官の言葉と言うよりもただの一人の人間としての言葉だった。
「翠……」
あまりにも彼らしからぬ発言をするので、カヤは驚いてしまった。
そして、
「……だから二人には揺らいだところを見せたくない」
そんな発言で更に驚いた。
(え?二人?)
なんて可哀想に、と哀れになってしまった。
どうやら熱のせいで数の数え方が分からなくなってしまったらしい。
「ねえ、大丈夫?タケル様は一人だよ……?」
心底心配になったカヤは、翠の額に手を当てた。
相変わらず熱い。
話している言葉は割とはっきりとしているが、もしや意識朦朧としているのだろうか。
「……はあ?何言ってんだ?」
翠は怪訝そうに眉を寄せると、カヤの手を握って額から退かした。
真剣なその瞳がカヤの視線を絡めとる。
「俺、お前の事すごく大事にしてるんだけど」
あまりにも度肝を抜かれる言葉だった。
カヤは石化した。
「……え?もしかしてその二人の中に私も入ってる?」
呆けたように呟くと、翠が気分を害したように目を細めた。
「自覚無しかよ……」
ぼそっと言われ、カヤは雷に打たれた様な衝撃を受けた。
(え?え?私?)
守りたいって言ったのも、支えになりたいって言ったのも。
この国で一番大切な存在だって言ったのも。
(……タケル様だけじゃなくて、私も……?)
「っ、」
――――ようやく理解した時、カヤは顔から火が出そうになった。
そして突然、翠を膝枕しているこの状況が死にそうなくらい恥ずかしくなった。
「す、翠っ……頭退かして!」
慌てて翠の頭の下から膝を引き抜くと、カヤはずりずりと後ずさった。
