鈍い音が室内に響く、物が散らかった床にひっくり返ったソファー。耳を劈く怒号は、いつもと変わらない――それは、今日までの話。


「チームを抜ける、だ? ふざけてんじゃねぇぞ!」
「何もふざけた覚えはないし、元々居ても居なくても変わらないんだから自由だったろ」


 自分の気にくわないことがあればすぐに癇癪を起こすコイツとの付き合いはそこそこ長いが、もう付き合ってられない。


「てめぇ……何考えてやがる」
「別に何も」


 殴られた頬は紅く腫れているに違いない。抜ける、といきなり言ったからこうも怒っているんだろう。


「お前が抜けることは赦さない」
「は、でないとこのチームは強くないから、か?」
「……っ!」


 チーム、といっても粋がったガキのお遊び集団みたいなものだが。暴走族でもなければギャングでもない、ただの現実から逃げるガキのお遊び集団に近い。


「どうせ、強いと言っても威張れるのは精々学校のお遊び集団が今更、何をするって言うんだ」
「黙れ!」


 自分が全てだと思い込むガキこそ、弱くて脆い存在だという。


「貴翔」
「うるせぇ、お前が抜けることは絶対に赦さない!!」
「理由は」
「俺を、置いていくことは赦さない」
「バカだろ、お前」