ピピピ ピピピと機械音が部屋を隅から隅までこだまする。この音を聞くと朝が来たのだと分かる。朝は嫌いじゃない。外からもれてくる様々な朝食の匂いや人々の声がとても心地良いからだ。身体を起こし、自分も朝食の準備をしようと部屋を見渡す。そこで昨日何をしたか思い出す。部屋に散乱した道具や、衣類などを片付けながらこれを母親が見たら絶句するだろうなとありもしない事を考え少し懐かしい気持ちになった。その懐かしい気持ちのまま、パンをやき、珈琲を入れる。毎回パンを焼く時に少し焦がしてしまう。上手く焼こうと思ってもなかなか出来ないものだ。黄金色に輝くバターを塗って口に運ぶ。そして、珈琲を飲む。これを何度か繰り返して朝食をすませる。そこで、今日は1限目に講義が入っていた事を思い出し慌てて準備をし、大学に向かった。
「おーい、知一!」
聞き馴染みのある声が聞こえた。
「よぉ、大智」
「なぁ、今日の講義ってなんだっけ」
「知らね」
同じ講座をとっている友人の大智だ。金髪とまでいかない明るい茶髪でいつもチャラ男のようなかっこうをしている。
「出た!知一の塩対応!」
「うるせーよ、講義遅れるぞ」
そういうとやばい!と言いながら大学までの道を走っていった。遠くの方でお前も遅れるぞ!という声が聞こえたが聞かなかったことにして大学への道を歩いていった。