終電を待つ駅のホーム。

肌寒い待合室には僕たち二人しかいなかった。

「別にここまで来なくて良かったのに」

大きい溜め息は一体どういう意味なのか、この状況では全く分からない。

思えば、初めて会った日、彼女と今日会っていることなど想像もつかなかっただろう。

最後に会った日、彼女と今日こんな形で会っていることなど思いもしなかっただろう。

「外で待ってるわ」

終電の発車時刻まで五分を切ったところで、ホームに出ようとする。

待合室より少し寒いくらいだから、我慢できない感じではない。

「お前も気をつけて・・・」

ホームに出た瞬間、右手を捕まれる。

慌てて振り返ると、大粒の涙がこぼれ落ちるのを我慢する彼女がいた。

「・・・ごめんなさい」

呟きのような小さい声だった。

だけど、彼女の声だ。

涙がこぼれ落ちてしまった瞳が、視線を僕に定めてきた。

「あなたに助けてもらった日。私が辛いときに連絡して、いつも会ってくれた日々。どれも感謝している。本当にありがとう」

彼女との日々が走馬灯のように、いや、それ以上にはっきりと蘇る。

無愛想な表情に時折見せた笑顔。

明日また会える、そんなことを感じさせる笑顔。

「だからこそ、あなたには幸せになってほしかった。私はもう大丈夫だから。だから・・・」

結果とか答えのようなものを出すならば、きっと今目の前のことが答えなのかもしれない。