「食品が二点、雑貨が五点、衣料品が二点、家電が一点と、家具が一点と、あとは自転車が二台ですね。お荷物の置き場はこちらでいいですか?」
「はい!」
「じゃ、ここにお受け取りのサインを」
「はいはい」

 受け取りのサイン欄には家主の名前を代理で書くべきか、自分の名前を書くべきかいつも悩むのだがどちらでもよさそうなので深く考えずに末松と自分の名を記入している。そんなことよりも。

「あの、本当にお代はいらないんですか?」

 律歌は挨拶代わりの質問をぶつける。お姉さんはきょとんとした顔になり、

「もちろんです。送料も商品代金も無料となっておりますので」

 こちらもお決まりの返事がかえってきた。

「それってどういうことなんでしょう?」
「さあ……? ごめんなさい、ちょっと、私には」

 困惑する配達員……聞いたって仕方がないのはわかっていたが、毎日確かめずにはいられなかった。

「おっと、すみません失礼しますね。次がつかえてまして」
「あっ、ごめんなさい」

 後ろには大きなトラックが停まっている。今日一日でどれだけのものを配るのだろう。

「お仕事、大変ですね」
「まあ、そうですね」

 お姉さんはシロネコアマトと書かれた帽子を目深にかぶりなおし、

「本当にここは、天国ですね」

 そう言うと、忙しなく行ってしまった。