「そんなの、誰が作るの?」
「二人で作るの!! おれとりっかでしょ! 二人しかいないんだから、ほら、早く始めないと完成が遅くなるよ! 山を越える日も遠のくよ!」

 全部準備し終えるにはどれくらいかかるのだろうか。だが、ここには時間だけはあった。

 それからは山と自宅を行ったり来たり。水と食料のほか、雨具、寝具、細かな医療道具などまで、必要になりそうなものをどんどん持っていき、基地を充実させていく日々が始まった。

「うー……もう疲れた……」

 移動は自転車しかない。最も近い山からとはいえ、手ぶらで探索した時とは違い、重い荷物を持ってひたすら行き来する。律歌は何度も弱音を上げた。

「じゃあ続きはまた明日にする?」

 と、それを一切責めない北寺に、

「……しない。早く山の向こう側に行きたい」
「じゃ、がんばろう」

 諦めそうになる気持ちを毎日立て直しながら。