「どっち方面に行ってもどうせ山にぶつかるなら、今度は山に一番近い方角から攻めていって、登ってしまうのはどうかしら」
「山登りするつもりで行くってこと?」
「そうなるわね。それで、山の向こう側まで行くのよ」

 北寺はふむふむと頷いて、

「ここから山に一番近い方角は――」
「南の方!」

 律歌が地図上を指さす。

「どれくらいの深さかはわからないけど、結構大きな山だったわよね」

 どの方向を向いてもそれなりの山に囲まれている。

「そうだね。山より向こうに行くには、山の中で野宿する必要はあるだろう」
「ええー、そーか、大変……」
「歩いて越えるんだから、そりゃね」
「うーん、じゃ、キャンプ用品買う?」
「必要になる可能性は高いし、まあ買っておいたほうがいいね。使わなければ捨てればいい」
「タダだし?」
「そう。タダだし」

 天蔵はアマトでゴミも回収してくれる。もちろん無料だ。

「マウンテンバイクで山登りかー。一度やってみたかったけど、準備が結構いるだろうなあ」
「ゆっくり準備すればいいじゃない。この筋肉痛もなんとかしたいし」

 天井を仰いでキャンプ用品の数を指折り数えている北寺に、律歌は完全おまかせモード。山を登るとなると、体力回復させねばなるまい。と、思ったものの。

「じゃ、体力つけてね、りっか」

 北寺がにっこりと微笑みかけてくる。