律歌の返答を聞いた瞬間、その物体は急速に収縮を始めミノムシのように布団を巻き付けて小さく丸くなった。

「……は、や、すぎィィィィ……っ。おやすみ」
「やだーっ!」

 律歌は力任せに布団をひっぺがえそうとして、北寺の力が意外と強くて失敗。

「もうっ、五時に出発って言ったでしょ! 行こう北寺さん! 出かけよう!」
「んん……そんなこと……言ってない……まじで言ってないよ……」

 すやすやと寝息が立ち始めてしまう。

「いいのーっ。ほら、朝ごはん食べるよっ。北寺さん!」

 律歌は北寺の顔を覗き込み、彼の首元までまっすぐ流れている長い髪をちょいとかきわける。金色の髪が美しい彼の寝顔は、見方によっては人形のように無垢にも見えたし、都心の暗いビルで働きづめの疲れたホストのようにも見えた。それにしても起きる気配がない。

 律歌はあきらめてベッドを降り、階段を下っていく。そろそろ朝ごはんが届くはずだ。と、下っている途中でチャイムの音がした。

「こんにちはー。アマト運輸です」
「あっ、はーい! おはようございまーす」

 時間通りだ。玄関に行きドアを開けると、見慣れた段ボールが積み上げられていた。白い作業着を着たお姉さんがその横に立っている。彼女の被っている帽子にはトレードマークのシロネコのイラストが。