翌日、律歌は北寺の家に行ってみた。

「いらっしゃい、りっか」

 出迎えてくれた北寺の手には、天蔵《アマゾウ》の段ボールが抱かれていた。律歌が不思議に思い中を覗き込むと、「あ、これね?」と彼は隠すことなく中身を見せてくれた。綿が敷き詰められていて、親指くらいの大きさの、黒いまだら模様の卵が二列に八個並んでいた。

 うずらの卵だろうか。

「実は、ペットを飼おうかと思ってさー」
「ペット?」
「そう。でも天蔵《アマゾウ》に生き物は売っていないから、いろいろ考えたあげくね――さ、あがって」

 用意されていたスリッパを履いて、廊下を行く。前を歩く北寺が言う。

「うーんでも、なかなかうまくいかなくてね。捨てるのももったいないし、最近じゃ毎日卵料理だよ」

 律歌は、食材として天蔵《アマゾウ》に売っている卵を、温めて孵化させようとしているのだと気が付いた。しかし、そんなことができるのだろうか? 疑問に思ったことを口にしてみる。

「でも、売られているのは、親鳥から離してしまった卵でしょう」