さて、サクッと顔を洗って着替えよう――と、ベッドから降りようとしたら、全身がとてつもなく重いことに気が付いた。股と腰が重い。磁石にでもなったみたいに動かない。あとふくらはぎが痛い。筋肉痛だ。昨日あれだけ走ったから……。

 北寺の平気な顔に騙されたと思いながら、苦労してなんとか這い出る。今日は一歩も外に出まいと、ゆるいトレーナーに深緑色のスカートを合わせた。

 階段を降りてダイニングへ入ると、テーブルに北寺の作った料理が並べられていた。プチトマトとモッツァレラチーズが紅白交互に並んだサラダに、焦げ目もなくつるんとした黄色いオムレツ、アスパラガスのベーコン巻き、白ご飯とお味噌汁。

「ごめんね、どれも簡単なもので」

 言いながらエプロンを外して席に着く北寺。白いシャツ、茶色のハーフパンツ、彼も軽装だ。

「ええーううん! いただきます。ってかこのサラダだけイタ飯屋みたいね」