律歌は0120から始まる天蔵《アマゾウ》の電話番号をコピーして貼り付けて、通話マークを押した。呼び出し音が続いた後のこと。

「はい。天蔵《アマゾウ》カスタマーサービス、添田《そえだ》です」

 繋がった!! 録音音声というわけでもない。きちっとした若い男の声が聞こえた。謎のベールに包まれている天蔵関係者との直接通話に、緊張が走る。

「あの! 助けてほしいの。ここはどこなの?」

 律歌の切羽詰まる呼びかけに一呼吸置いて、カスタマーサービスの添田は応えた。

「我々にできることでしたら。いかがいたしました?」
「救助を要請してもらえないかしら!?」

 しかし、感触はシロネコアマトの配達員と同じようなものだった。

「そのようなサービスは行っておりませんが」

 自分たちとは異なる常識で動いているような人たち。

 価値観が通じないことへ、早くも諦めの気分が襲ってきた。初めてシロネコアマトが荷物を運んできた時に、律歌がさんざん繰り返した問答だ。

 ここは、違う世界なのだろうか? そんなことまで考えてしまうそうになる。

 いったい、このサービスはどんな形で成り立っているのだろう。誰を相手にしているのだろう。律歌達のようなここに迷い込んだ住民が本当に本来の客なのか?