ふと、何年も使っていないような小屋を見つけた。さらにその付近に、ところどころ塗装が剥げで錆びた軽トラックが打ち捨てられたように放置してあるのを発見した。

「わ、これ廃車? あーこれが使えたらいいのに……」
「処分代の方が高つくんだろうね」

 北寺は付き合うように律歌の後ろをついていたが、追い越してトラックの方へ行き、

「うーん。まだ使えるんじゃない?」

 と、運転席のドアを開ける。律歌は驚いて北寺の傍に駆け寄る。

「鍵、開いてるの?」
「いや、窓が割れててさ、内側の鍵を開けられたんだよ。鍵穴壊して電気通せば走るだろうけど――」北寺はシートに積もった砂を払って乗り込み、「ガソリンが残ってるかは、相当怪しいな」
「ガソリンだけなら、天蔵《アマゾウ》に売ってるんじゃないかしら?」
「見てみようか」

 スマートフォンを起動し、天蔵《アマゾウ》のサイトに接続する。検索欄に「ガソリン」と入力してぽちっ。

 ――該当する商品がありません。

「ないね」

 素っ気ない結果が返ってきた。ふと、いつもなら気にしないような下部のリンクに目が行く。

「あ、これ、問い合わせができるみたいよ。メール……電話も!」
「へえ。つながるかな?」

 以前電話が使えるか律歌と北寺で試したところ、消防や警察の緊急通報も繋がらなかった。互いの電話番号にかけてみても、鳴らなかった。でも、天蔵《アマゾウ》にはネットが唯一通じるのだ。電話だって通じるかもしれない。