北寺においていかれたことにいじけたような気分――だが遅いことを気遣われてゆっくりゆっくり並走されてもそれはそれで癪な気分になるかもしれない。ついていけない自分に腹立たしいような気持ちもあるし、じゃああとどれくらい走らないと追いつけないのかというため息もあふれてくる。

 ああ……つまりは疲れたのだ。

 日差しの下、律歌はついに足をついた。そして自転車が倒れるのも気に留めず、自分もその地に横たわった。

「りーっかーっ」

 また声が聞こえるが、

「きー……北寺さんが……来いー……」

 八つ当たりまじりにそんなことをぼやきながら地面にごろんと寝そべる。後頭部、髪の間に砂利を感じるのもいっそ気分がいい。

 ふうーっと息を吐きながら天を見上げた。

 空は高さの概念すらないほど高く、真っ青に澄み切って明るかった。森に覆われた山が周囲を囲っていた。雁がまた飛んでいる。

 大きな風が腹を撫ぜていった。汗が冷えていく。

 追いつくだとか、あとどれくらい走るだとかいった自分の負けず嫌いな感情がばかばかしくなってきた。走りたいときに走って、寝っ転がりたいときに寝っ転がって。それでいいじゃない。