笹原さんと仲良くなれないまま1ヶ月が過ぎてしまった頃。


「琴坂さん」


「は、はい!!」


急に笹原さんに話しかけられた。

やっと心が通じたの?

そう思ったのだが…


「私の上履きと体操服が何処にあるのかご存知ですか?」


「え…?」


見ると笹原さんは来客用スリッパを履いていた。


「なくしちゃったの?」


「そのようです。昨日帰る前に下駄箱に収納したのですが…」


無表情で感情が読めないけど、きっと戸惑っているんだろう。


「じゃあ探すの手伝うよ!」


「宜しいのですか?」


「もちろん!あと、敬語じゃなくていいよ?それからさやかって呼んでほしいな」


期待を込めてそう言ってみると、笹原さんは少し考えて、


「敬語は癖になってしまっているようなので、このままを希望します。呼び方に関しては畏まりました」


やはり無表情でそう言った。

敬語がくせになってる人って本当にいるんだ。


「りょーかい!じゃあ私も美月って呼んでいい?」


「はい」


「やったぁ!じゃあ友達になってください!」


そう言うと、無表情だった美月の目が驚いたように少し大きくなった。


「それは、構いませんが…」


「やったー!!じゃあ上履き一緒に探そう!」


「あの、さやか…」


「遠慮しないで!とりあえず下駄箱行ってみよ!」


「昇降口ですか?分かりました」


「美月、そっちじゃないよ!」


美月は方向音痴のようだ。