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「おーい」




わたし、とうとう幻聴まできこえるようになっちまった。


いくら人肌恋しい言うても、あかんよ、しかもこんなほんわかした癒し系の男性想像しちゃって、
都合が良すぎるのよ私の頭。


思いっきり自分にビンタをかますと、
私の中の勝手につくりあげたバーチャルの男はふふふっと腹を抱えて笑ってた。



わたしがセンチメンタルな気分によっちゃってる間にどんだけ距離詰めてきてんだ。



よいしょっと、わざわざ声を出して2人用のベンチの片方に腰掛けて、


カップのコーンスープを私に受け取れといわんばかりにんっと差し出す。


私は暖かいと言うより暑いコーンスープを受け取り、音フェチが好きそうな音を出すプラグを開けた。





何故か緊張して、いつもよりゴクンッと音が聞こえるようなきがしたけど気のせいかもしれない。




「おめさん、名前なんてんだい?」




いつの時代だよ、江戸っ子か、お前は生粋の江戸っ子か。
しょうもねえツッコミを心中で呟きつつ。
知らない人に名前なんか教えてもなー、なんて、酔っ払ってるのか何だかわからんけど。


私の口からはボブって名前しか出てこなくて、私は今この瞬間からボブになったのだ。



「ボブっていうんだ(笑)」



有り得ねえなんて、言葉を口にしてゲラゲラ笑う姿を見て、私はおセンチな気分をどっかに放り投げた気分になった。



さっきまでとは打って変わってボブの心は晴れやかだったよ。






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