というわけで私は、会社の近くのパティスリーでチョコレートの詰め合わせを買うという結論に落ち着いた。

そして今日、バレンタイン当日。
超絶仕事ができて無駄に顔もスタイルも抜群な蓮見は、案の定たくさんのチョコをもらっていた。
蓮見の机に山積みになったきらびやかな包みを見ているうちに、私はだんだん意気消沈していく自分を感じていた。

どうしよう。どうやって渡せばいい? 今日は別に会う約束もしてないし。どんな顔して声かければいいのよ…。
ていうか、あんなたくさんチョコもらってんのに、これ、いる?
蓮見の性格からして、喜んで彼女からのチョコもらうなんて思えないし。渡したって自分が嫌な気持ちになるだけじゃ…。

考えているうちに鬱々してきて、なんだか嫌になってきた。

ああ、もう、帰っちゃおうかな。
そう思って会社を出た、そのときだった。

「おい、清水。なに帰ろうとしてんだよ」

真後ろに立っていたのは、腕を組んでにやりと笑う蓮見だった。

「なんか大事なもん忘れてねえか?」

もちろん蓮見の言いたいことは分かっていたけれど、「え、そう? 仕事は全部終わったし」と平然とした顔で答えてしまう。

もしかして傷つけた? と不安になってちらりと隣を見上げると、意外にもさっきよりもっと不遜な笑みを浮かべていた。
それから、長い指が私の鞄の中を指差す。

「箱、見えてんだよ」

しまった、と内心で舌打ちをする。確かにいかにもバレンタインな包装が丸見えになっていた。

「なに遠慮してんだよ、らしくもない。貰ってしんぜよう」

蓮見はにやにやしたまま掌を差し出してきた。
くそ、これはごまかせない。
私は唇を噛みながら鞄からチョコを取り出した。