再び母さんの写真を見つめる。

2人とも、紫苑の花を持っている。
紫苑なんてそこまで有名な花じゃない。
なんでこの花なんだろう。

何か意味が込められているのか。
俺はスマホで紫苑の花言葉を調べた。

『遠くにいる人を想う』

紫苑の花にはそういった
意味が込められているらしい。

遠くにいる人という言葉が、交換した
自分の子どものことを指しているのかも
しれないと気づく。

遠くにいる人を想う。

母さんたちは、彼女たちなりに自分の
実の子どもにあたる子のことも
ずっと心配していたのかもしれない。
なんて甘い感情に期待してしまう。

俺だってあと2年で高校生。

少しずつ自立するための権限を
法律から与えられる歳になる。

俺は結乃を守りたい。
何があっても傍に居てあげたい。
それだけが俺に出来ることだから。
唯一の償いだから。

神様が、もし本当に居るのなら。
結乃をとびきり幸せにしてあげてほしい。

彼女はもうたっぷり傷ついたから。
これ以上苦しまなくてもいいと思うから。
結乃を助けてあげてほしい。

秋が深まり夕暮れが町を薄暗く染める。
その様子をぼんやりと窓から眺めて、
形にならない言葉を吐いた。

君だけを。
君だけを好きだから。
特別だって思ってるから。

「結乃............好きだよ。」