時間がゆっくりと流れて行く。

華月と過ごす時間は俺にそう感じさせた。

気がつけばもうタンポポの黄色い花の姿は見えず、白くて丸い綿毛へと変わっていた。

「ねぇ、そう言えば今はどんなの書いてるの?そのノート、そうなんでしょ?」

隣に座っていた華月はノートを指差してそう言った。風になびく髪を鬱陶しそうにその細い手で押さえていた。

「教えるわけないだろ、ちゃんと本屋で買え」

「え〜いいじゃん!」

「ダメだっつうの、ルール違反だ」

「ケチ!」

華月はそっぽを向いて拗ねたように口を尖らせている。

「てゆうかさ、太郎の本ってタンポポ以外面白くないよね」

「おまっ!なんて事をサラッと言ってくれてんの?凹むだろが!」

「だって本当の事じゃん。ノンフィクション作家に転向した方がいいんじゃないの?」