鞄から取り出したノートの上をペンは軽やかに走って行く。

『名前も知らない彼女に渡したタンポポの花言葉をあの時の俺は知らなかった。でも、美華に渡したタンポポの花言葉を俺はもう知っている。それを意識していたわけではなくても、俺はその言葉を知っていて美華に渡したんだ』

書いた文字を塗り潰す様にペンを無茶苦茶に動かした。

きっとこんな文は要らないのだと、そう思えたから。

焦る必要はない。華月も言っていた様に。

俺たちはまだ始まったばかりなんだから。