都会のど真ん中に突如現れるその公園は、平日の昼間ながらも人影がちらほら見て取れる。

そのだだっ広い公園の広場の端に一本の常緑樹がある。名前は知らない。

樹齢はわからないが、かなり立派な大木で抱きついて腕を回しても幹の半分にも届かない。悠然と空に向かって伸びる枝葉は、ちょうどいい具合に地面に影を作っていた。もたれかかる様に根元に腰を下ろす。

風が抜けていく音に声が混じって聴こえた気がした。

『私達、宿り木みたいだね』


驚いて背後に視線を送ってみたが、そこには誰も居ない。

「何をやってるんだか・・」

自嘲の呟きはやはり春の風が攫って行った。

鞄からノートとペンを取り出して膝の上に置き、思い付くままにペンを走らせて文字を並べて行く。

意味があるようで、意味のない文字の羅列を眺めて大きく溜め息をついた。

「ああ、ダメだな」