「北條先輩!!」



廊下に響いた、大好きな人の声。

……え?


僕はゆっくりと、振り返った。

そこにいたのは——。



「行かない、でっ......」



涙を流しながら、僕を見つめている香織ちゃんの姿。

たくさんの人が通る廊下は、シーンと静まり返っていた。



「香織、ちゃん?」


驚きのあまり、久しぶりに呼んだその名前は震えていた。



「......っ」



僕を見つめる香織ちゃんが、悲痛な表情を浮かべている。


どうして、そんな顔してるの? どうして、僕の名前を呼んでくれたの?



どうして——泣いてるの?