過去になんて戻れるはずがないのに、そう願わずにはいられなかった。
放課後になり、帰る支度をする。
朱音と教室を出て廊下を歩いている時、角を曲がった先によく知る人の姿が見えた。
「......っ」
一週間ぶりに見る、北條先輩の姿。
一瞬、足が止まりそうになったけど、すぐに平静を装う。
数人の女の子に囲まれている先輩は笑顔を浮かべていて、私たちの方向に向かって歩いてくる。
何を話しているのかわからないけど、楽しそうな先輩。
無意識のうちに見つめていると、北條先輩の視線が、私を捉えた。
確かに目が合ったのに、何事もなく逸らされてしまう。
だんだん近づく距離。
先輩は何も言わずに、まるで、私の存在が見えていないかのように通り過ぎて行った。
......自業自得だ。