「え?」

「私のことは気にしなくていいんで、どうぞ」



今すぐ、この場から逃げ出したかった。



「愛崎さんほんとっ?やったぁっ」



吉田さんが、嬉しそうに飛び跳ねる。

ああ私も、こんな可愛い女の子だったら。

素直で、ちっちゃくて、守ってあげたくなるような子だったら......先輩の告白を、素直に受け入れられたのかな?



「ね、一緒に帰りましょう会長?」



これ以上ふたりの姿を見ていたくなくて、教室から出ようと歩き出す。

けど、がしりと腕を掴まれて、引き止められた。



「待って香織ちゃん」

「嫌です、離してください」

「香織ちゃん、僕は......」

「離してください!迷惑です!」



まだ何か言いたげな北條先輩に、そう強く言い放った。

私の声が教室に響き渡った後、シーンと静まり返る。