「うん、僕が会いたいだけだから」
私の態度なんて全く気にしていない北條先輩は、いつもの優しい笑顔を向けてくる。
その笑顔に救われたけど、だからといって疑念が消えるわけではなかった。
「......そうですか」
なんだろう、この気持ち。
今は、あんまり先輩と、話していたくない。
会えて嬉しいはずなのに、来て欲しいと望んでいたのに......どうして、こんなにモ ヤモヤしてるんだろう。
「香織ちゃん、この後用事ある?」
北條先輩の質問に、なにも言わず視線だけ返した。
「よかったら、一緒に帰らない?」
一緒に......。
その誘いは嬉しいけど、こんな気持ちのまま一緒にいたくないというのと、昨日に続いて送ってもらうのは申し訳ないという気持ちが私の首を左右に振らせた。

