ダメだ、今日は早く帰ろう。
きっと明日になったら、また来てくれるはず。
おはよう香織ちゃんって、笑って現れてくれるはずだもん。
そう思って、カバンを手に立ち上がった時だった。
「香織ちゃん!!」
待ち望んでいた人の声に、ピタリと体が止まる。
北條先輩は教室に入るやいなや、すぐに私のもとへと駆け寄って来てくれた。
「はぁ......やっと会えた」
嬉しそうに笑う先輩に、さっきまでの悲しい気持ちが吹き飛んだ。
会いにきてくれた、と、喜んだのもつかの間、
「今日一日忙しくて、全然教室に来れなかったんだ」
そのセリフに、言葉を失った。
え?忙しかった、の?
吉田さんと楽しそうに、話してたのに?
「別に、待ってないです」
口から出たのは、そんな可愛くないセリフ。
本当は、ずっと待ってたのに。

