ああ、そう、吉田さんだ。
彼女は、私たちのクラスメイト。
小柄で色白で、小動物みたいで、可愛いという言葉がぴったりな女の子。
クラスのマドンナ的存在で、学年で一番モテるという噂を聞いたことがある。
北條先輩と吉田さん、知り合いだったんだ。
「ま、吉田さんが喋りかけただけじゃない?あの子、北條先輩のこと狙ってるって有名だし」
私を気遣ってくれたのか、そんな言葉をかけてくれる朱音。
狙ってるって、好きってことだよね?
あんな可愛い子に惚れられたら、嬉しいだろうな......。
ざわつく胸を鎮めるように、お弁当のおかずを詰め込む。
キリキリとした心臓の痛みをひたすら感じることしか、今の私には出来なかった。
結局、北條先輩は放課後になっても現れなかった。
私に興味、なくなっちゃった......?
そう考えると、胸がぎゅっと締め付けられて、泣きたくなった。
朝までは、あんなに幸せな気持ちだったのに......。

