香織ちゃんと出会ったのは、ちょうど一ヶ月前。
生徒会室に行こうと階段を上がっている時、上の段から降りてくる女の子が見えた。
なんだかしんどそうだな......遠目から見ても、顔が真っ青だ。
その子は体調が優れないのか頭を押さえていた。
大丈夫かな?と心配になったその時。
——彼女が足を踏み外し、上の段から落ちてきた。
咄嗟に手を伸ばし、間一髪のところで受け止める。
上から人が落ちてくるなんて初めての経験で、まるで——お姫様が、空から降ってくるワンシーンのようだと思った。
その状況以上に驚いたのは、彼女から香った匂い。
香水ではない、控えめに香る優しい香りは——いつか夢で感じた匂いと、全く同じだった。
間違いない。
この子は僕が探していた運命の相手なのだと確信した。
その相手が、香織ちゃんだ。
心の中にぽっかりと空いていたピースが埋まるような、満たされた気持ち。
ただそれだけの理由だと思われるかもしれないけど、僕にとっては十分すぎるきっかけだった。