振り向いて、お姫さま。




「北條先輩、もしかして照れてますか?」



当たり前だよ、と、心の中で返事をした。
もう照れっ照れだよ。嬉しすぎて、今日は眠れそうにないくらい。



「そりゃね......好きな子に褒められたら、男は簡単に喜ぶよ」



あー、さっきの発言、録音していればよかった。



「ふふっ。ほんとに嬉しい。どうしよう、顔の緩みが治らない」



香織ちゃんに見せられないと思うほどだらしない顔を隠すように、上を向きながら歩いた。







次の日。

昨日無事に香織ちゃんを送り届けてから家に帰り、朝登校してくるまで終始昇天しそうなほどの幸せに包まれていた。

......のに、



「会長!ちょっと来てください!」



香織ちゃんの教室に行こうと思った僕の前に現れた、生徒会役員の後輩。

今日配る校内アンケートのプリントを刷り間違えた上、データを失くしたと言い出す始末。