「夢と同じ匂いって、それって良い匂いだったんですか?布団の匂いとかじゃなくて?」
「もちろん!」
「ふふっ、変なこともあるんですね。でも、北條先輩だって......いい匂いだと思いますけど」
突然言われた言葉に、驚きのあまりピタリと足が止まった。
「え?本当に?」
まさか、そんな風に思ってくれてるなんて......。
どうしよう、嬉しすぎる。
昔から、祖父がよく言っていた言葉がある。
匂いを心地よく感じる相手は、相性がいい証拠だと。
『香りはね、本能的に相性が良い人と導き合わせてくれるんだよ』
僕と香織ちゃんは相性がいいと言われたような気分になって、顔が緩んで仕方がない。
「よかった。ひとつでも、好意的に思ってもらえるところがあって」
内心嫌われているんじゃないかとすら思っていたから、心底安心した。

