「香織ちゃん」



僕は大好きなその名前を呼んで、一直線に彼女の元へと駆け寄る。

今日も会えたことに喜んでいる僕とは裏腹に、彼女は「はぁ......」とため息を吐いて、渋々という様子で本を閉じた。



「また来たんですか?」



素っ気なくそう言う彼女の名前は、愛崎香織(あいさき かおり)ちゃん。

僕の......好きな女の子。



「うん。香織ちゃんに会いたくて」


一ヶ月前に告白し、ものの見事に振られた僕だけど、めげずに通い詰めている。

だってこれは、僕にとって初めての恋だから。



「そんなこと言われても、返事に困ります」

「『私も会いたかったです』って言ってくれたら嬉しいな」

「ありえません!」

「ふふっ、今日もクールだね」



そんなところも可愛い、と思いながら、自然と頬が緩んだ。