「僕の方が感謝したいくらいだよ」
「え?」
「手伝うって言ったのはほとんど口実。香織ちゃんと少しでも長く一緒にいたかったんだ」
正直にそう伝えれば、香織ちゃんの目が大きく見開かれた。
そして、その顔が、赤く染まっていく。
「......そういうのは、ズルイです」
「っ、え?」
な、なに、その反応は。
待って、可愛いんだけど......。
ズルイってどういうことだ?と必死に考えるも、その意味を汲み取れない。
僕の発言に対して香織ちゃんがこんな反応を見せたのは初めてで、軽くパニック状態だ。
顔を赤くした香織ちゃんの可愛さも半端ではなく、伝染するように僕の顔にも熱が集まる。
いや、香織ちゃんはいつも可愛いけど、可愛いけど......これはちょっと、反則級の可愛さだ。
いったい何が〝ズルイ〞のかが気になって、聞き返そうとした時。
教室の扉が、勢いよく開く音が聞こえた。
「お!終わったか!......って、北條じゃないか」
タイミング悪く入って来たのは、体育の先生。
なるほど、香織ちゃんの担任はこの人だったのか。

