でも、今回ばかりは引き下がれない。

このまま香織ちゃんをひとり残して帰るだなんて、僕にできるはずがなかった。

それに、きっとこのペースじゃ最終下校時刻まで に終わらないだろう。


香織ちゃんが束にしたプリントを見ると、凄く丁寧に留められていた。

前から思ってたけど、几帳面なんだなぁ。
こんなの適当でいいんだよ。

というより、他の人間だったら、仕事を押し付けられたって放棄して帰るだろうに、こんな時間まで残って律儀に作業をするなんて......香織ちゃんは、本当に良い子。



そういうところも大好きなんだ。



「ふたりの方が早いでしょ?それに、放課後の教室に、香織ちゃんひとりにさせられないし」



そう言うと、香織ちゃんはうっと言葉を詰まらせた。



「でも......」

「ふたりで早く終わらせて帰ろう。ね?」



僕の言葉に、少しの間黙り込んだ後、ゆっくりと小さな口を開いた香織ちゃん。