「担任の先生に、ホッチキス留めを頼まれたんです」
そう言って、綺麗に紙を束ねて、角をパチンと留めた香織ちゃん。
紙の束を、隣の机に置いた。
その隣の机には、まだ束ねられていないプリントの山が。
「これ全部ひとりでやるの?」
「はい」
最終下校時刻は十九時だ。
それまでに、この山がなくなるとは思えない。
まず、女の子ひとりにこんな量の仕事を任せるなんてありえない。
香織ちゃんのクラスの担任、誰だったかな?
僕からちゃんと言っておこう......。
「ホッチキス、もうひとつある?」
「え?ありますけど......」
「貸して」
俺は自分の鞄を置いて、香織ちゃんの前の席に座った。
この量なら、急いで二十分くらいかな。
「北條先輩?どうして座るんですか?」
「僕にも手伝わせて」
「い、いいですよ!帰ってください!」
全力で断られ、少しだけショックを受けた。
僕はやっぱり、まだまだ気持ち悪がられてるのかも......。

