先生の腕には、大量のプリントが抱えられている。
「......げ」
あからさまに忘れていたという表情をする朱音に、呆れてため息を吐き出した。
「え、えっと、今日は弟のお迎え行かなきゃいけなくて」
困ったように眉の端を下げて、先生にそう言った朱音。
いや、朱音ひとりっ子でしょ?と、心の中でツッコんでおく。
「そうなのか。でも困ったな、明日までに必要な資料なんだ。それに、もうひとりの日直も帰ったみたいだし、全く......」
先生も大変だなぁとどこか他人事のように思いながら、帰る支度を始めた。
そんな私に、予想外のとばっちりが降りかかる。
「あ、先生。愛崎さんは予定ないみたいですよ」
......は?
「っ、ちょっと」
「おお、なら愛崎に任せていいか?」
キラキラとした目で見つめてくる先生。
こんなの断ったら、罪悪感に苛まれて先生が夢に出てきそう。