どんな美女でもその気にさせられるだろう人が、一体何を血迷ってしまったのか。
「北條先輩、もうそろそろHR始まりますよ?生徒会長が遅刻なんてしていいんですか?」
「少しでも長く、香織ちゃんと同じ空気を吸っていたいから」
「それ、北條先輩が言うと気持ち悪いです」
「毒舌なところも可愛いね」
ダメだ、会話が成り立たない。
私は、本日三度目のため息を吐き出した。
「私、遅刻するような人は苦手ですよ」
「......名残惜しいけど、そろそろ教室に戻るよ」
あっさりと意見を変えた北條先輩に、チョロすぎる......と心の中で呟く。
北條誠司がこんな人だって知ったら学園中の女子が泣きますよ、先輩。
「はい、さようなら」
私がわざと冷たく言い放つ別れの言葉にもめげることなく、一部の女子から〝必殺 スマイル〞と言われている笑みを浮かべながら先輩は手を振って教室を出て行った。
先輩がいなくなり、今度はため息とは別の息をほっと吐き出した。
「ふふっ、今日もラブラブねぇ〜」
背後から、からかうような声が聞こえて、呆れながら振り返る。