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「航。今日の部活、自由参加だけどどうする?」

「今日は家の手伝いしないとだから…ごめん。部長にも伝えといて」

「りょーかい!」

本当は部活に行こうと思ったけど…こんな気持ちじゃ絶対集中できない。

「水野くん!」

名前を呼ばれて振り返ると、クラスメイトの女子が上目遣いでオレを見ていた。

「なに?」

「じ、時間ある?」

「少しなら…」

「あ、あの…話したいことあるから移動してもいい?」

「うん」

オレたちは普段使わない階段の踊り場に移動した。

「話ってなに?」

「わ、私…ずっと、水野くんのこと気になってて、それで…今日はバレンタインだから、マフィンを作ってみたの。よかったら、受け取ってください!」

オレのために作ってくれて……
それを分かった上で断ったらすごく嫌な奴だけど、でも……

「ありがとう。その気持ちだけで嬉しい。だから…」

顔を上げた彼女は今にも泣き出しそうだった。

もし今目の前にいるのが暮沢さんだったら……素直に受け取っていたのに。

そんなことを思ってしまうオレは最低?

「ご、ごめん」

「……陽菜ちゃんだったら、受け取った?」

「え?」

「陽菜ちゃんが作ったお菓子だったら、笑顔で受け取るんでしょ?」

なにも答えないオレに、彼女は悲しそうに笑った。

「一生懸命作ったのには変わりないんだけどな……やっぱりそうなんだ。時間取らせちゃってごめんね」

パタパタと彼女は小走りで去って行った。

悪いこと、しちゃったかな……?