毎週金曜日に明李さんとお昼ご飯を食べる約束をするという、予想外すぎる嬉しい出来事に舞い上がった後も、僕たちは色々なことを話した。



 明李さんは経済学部に在籍していて、その名前が示す通り、経済について詳しく学んでいるようだ。マクロ経済学やミクロ経済学など、名前は聞いたことはあるものの、具体的な内容はまったくわからない。最近は簿記の資格を取るために勉強に励んでいるらしい。



 その他にも、カフェでバイトをしていることや、洋楽が好きなこと、中学・高校時代はバドミントン部だったことなど、今まで知らなかった彼女のことを、今日だけでたくさん知ることができた。



 信じられないことに、会話は弾んでいた。緊張はまだあるものの、しっかり会話ができている。もしかすると、毎日のように伊澄と話していたおかげかもしれない。改めて彼女に感謝する。



「最近、何かオススメの本とかありますか?」

 慣れない状況で神経を使い過ぎたため、比較的得意な趣味の話へと話題を変える。



「お、どんなのがいい? 新本格? 日常の謎? バカミス?」

 本の話題を出すと、明李さんはパッと表情を輝かせた。選択肢が全てミステリーなのが彼女らしい。



「ミステリーだったら、こう……なんというか、最後にひっくり返されるような話が読みたいですね」

「ああ、どんでん返し系かぁ。私も昔はハマったな。懐かしい」

 しみじみと昔を思い出すような顔で言う。



「今はあまり読まないんですか?」

「あれはね、時光くん。ウイルスと一緒だよ」

 明李さんは人差し指を立てながら、得意気に言う。うん、可愛い。

「ウイルス……ですか?」